「それ、さっき寛斗に聞いたんですけど、キョー先生のお母さんと寛斗のお母さんがお友達ってすごーい偶然ですよね! キョー先生のお母さん、東京音大の先生ってさすがって思ったんですけど」
そしてあらゆる事象を考慮しつつ適切な手段や方法を考え出」すのが、瀬戸川をしてただの優等生ではないと言わしめるゆえんだ。
「ここは、そうですね、寛斗の言うように、まず寛斗のお母さんと会われるのがいいのでは? キョー先生のお母さんにはお母さんの理由があって、連絡を取られなかったかと思われますし」
冷静な瀬戸川の言葉に、響も思わずなるほど、と思ってしまう。
「だからうちの姉弟みんなピアノやらせられたんだぜ? 姉貴二人がガキの頃、キョー先生のお母さんに来てもらってレッスンしてもらってたって」
次から次へと響の知らない母親の事実が出てきて、響は、へえ、としか言いようがない。
「俺は幼稚園から小四まで田村先生に習ってたんだけど」
「サッカーに夢中でやめちゃったんだよね」
寛斗の話を引き継いで瀬戸川が言った。
「で、どうする? キョーちゃん、今からうちくる?」
寛斗に聞かれて響は返答に迷う。
「とりあえず行ってみましょうよ。考えるのは話を聞いてからでもいいでしょ?」
「って、何でガリレオまでくるんだよ」
井原が響を促すと、すかさず寛斗が口を挟む。
「あたりまえだろ、俺は響さんのパートナーだ」
威張って言う井原を、響は睨みつける。
さっき音楽部員はみんな帰ってしまったし、ここにいるのは二人のことを知っている瀬戸川と寛斗だからいいようなものの、学校で教員がくっきりはっきり口にすることか、と響は思う。
「えっらそうに」
寛斗も睨みつけるが、「じゃ、早速行こう、もう五時過ぎてるよ」と瀬戸川に急かされて四人は音楽室を出た。
「俺らチャリだから先に行ってるわ。母さんに伝えとくから」
寛斗と瀬戸川が生徒玄関へと向かうと、井原と響は音楽室に鍵をかけ、教職員用玄関横の事務室に鍵を戻し、外に出た。
「お前、今日はこのまま帰ってよかったのか?」
「天文部の連中、もうちょい頑張るっていうから任せてきた。今日のミーティング明日になったし」
響にそう言うと、井原は駐車場の車のロックを外した。
「そういえば、割と安めの中古、いくつか候補あるんで、この週末見に行きますか」
響が助手席に座ると、井原が言った。
「助かる。いざって時、車ないとな」
冗談交じりだが、半分は本音だ。
父親がいつ何を言ってくるかわからない。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
