江藤先生と秀喜のウエディングパーティは、集まったみんなが暖かく二人を祝福し、大盛況といえるうちに、最後みんなに送り出された二人は終始笑顔だった。
「幸せそうだったな、江藤先生」
パーティのあと、にゃー助の世話をしてから井原の家に来た響はぼそりと言った。
「先生、紆余曲折がすごい大変だったみたいだから、その分も幸せになってもらわないと」
井原もワインを傾けながらしみじみと言った。
「肝心な時には周りがどう思うかなんて考えちゃだめだって、身に染みた、って、先生、言ってたよ」
響が言うと、「それ、めちゃ実感こもってるな」と井原も頷く。
「そういえば、響さん、今度大学のお母さんとこ行くんでしょ? いつにします?」
話を換えた井原を、響は見た。
「俺が、行くんだぞ?」
「いいじゃないですか、俺も行きたいし、久々の東京。何年振りだろ」
響にしても井原にしても、海外からこの街に戻ってきた時、東京は通過しただけだった。
「俺は別に東京自体あまりよく知らないんだ。ほぼ、大学とマンションの行き来で終わったし」
響の大学生活は実にピアノ漬けの毎日だった。
家に帰る気もなかったから、ひたすらピアノにのめり込んだ。
たまに、東京に出てきた祖父の陣中見舞いだけが楽しみだった。
「じゃあよけい、いろいろ行ってみましょうよ。ほら、スカイツリーとか」
嬉々として言う井原に、「ってか、東京タワーも俺登ったことないし」と響が打ち明ける。
「ウソ! じゃあ、東京タワーとスカイツリーのはしごするしかないなあ」
響がどんな突拍子もないことを言おうが、井原は面白がって楽しそうに笑う。
「そうだ、元気のやつが出るらしいライブもこの際行きましょうよ」
「ええ? それこそチケット取るのも大変とかって、生徒たち話してたぞ? GENKIの」
「そこはほら、同級生のつてでチケットくらいまわしてもらわないと」
井原が言うと、何でも何とでもなりそうだから面白い。
響は思わず笑う。
「可愛い。響さん」
「三十路まじかの男を捕まえて可愛いとかやめろ」
「生徒たちも言ってましたよ、キョー先生可愛いって」
「クッソ、なめられてる!」
響のムッとした顔を見て、井原はケラケラ笑った。
「可愛い響さんでいいじゃないですか」
いつの間にか井原の唇が響の傍にある。
「可愛い」
井原がまた呟きながら唇を重ねてくる。
さらに響のシャツの間から見え隠れする胸のあたりを啄んだ。
そうして口づけが再び深くなる頃、響の肌は徐々に炙られていく。
やがて記憶にある劣情を予測して響はグズグズになってしまう。
甘く井原に従順に溶けていく響の中へと押し入ると、井原の理性も直ぐと吹っ飛び、ただひたすら互いを求めあった。
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