花のふる日は58

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 京助はすると苦々しげに笑う。
「何で? お前を好きだからに決まってるだろうが」
 千雪はそんな京助を睨みつける。
「好き? ……て、お前、パラノイアかストーカーとしか思われへん」
「ああ、パラノイアでもストーカーでも、何でもいい。お前を逃がすつもりはないからな」
 しれっとそんな台詞を口にしながら、京助はまた千雪を抱き寄せる。
 京助が身体を密着させた途端、千雪はすぐ京助の意図がわかって身を引こうとしたが、京助が離すはずもない。
「京助……ええ加減に…せぇ………!!」
 口にする言葉とは裏腹に、身体の中の冷めやらぬ熱がまた京助によって勢いを取り戻す。
 やがて頭の中が何も考えられなくなる程、京助に操られて深い愉悦の淵に突き落とされ、溺れていく。
 千雪が意識を手放したことに気づいた京助は、ようやく千雪から身体を離し、疲れ切って動かない千雪の顔をじっとみつめた。
 おそらく千雪自身はわかってはいない、艶やかな吐息と同時に触れたものを狂わすような色香を放ち、京助はそれに囚われて身動きできなくなる。
 ふとした時にその首に置いた指に力を込め、千雪を殺したら俺のものになるだろうかなどと思う。
 狂気などどこにも存在するのかもしれない。
 千雪を殺して我と我が身を呪い、絶望とそして永遠に千雪を己のものにした悦びに狂い、己の命を絶つ自分が見える。
 殺人者の狂気は、歯止めが利かなくなったところで一気に加速する。
 かろうじて京助の中に残っている理性が、京助を殺人者とすることを阻止しているだけだ。
 工藤という男の出現は、京助にこの京都にいるあの男のことを改めて再認識させた。
 さらに、己の中の千雪に対する凄まじいほどの恋情を思い知らせてくれた。
 こんな思いは少なくとも今まで知らなかった。
 
 好きなんて生易しいもんじゃないんだ、覚悟しろよ、千雪。

 


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