「ってか、平造さんとこには俺が行くしかないだろ。まず、鈴木さんに電話して、猫のこと頼まないと。ってか、どうしよう、工藤!」
代わりに誰か行ってもらうとかも考えたものの、一人として成田に行けるような者はいないようだ。
「仕方ない、五時過ぎに工藤に電話してタクシーできてもらうっきゃないな」
あ〜あ、というのが良太の本音である。
とことん工藤と会えない状況が続くらしい。
といって、平造を放っておくわけにはいかない。
鈴木さんに事情を話し、平造の心配をする鈴木さんに猫のことを頼むと、良太は首都高へと車を走らせた。
「明日の、藤堂さんとの打ち合わせ、伸ばしてもらおう」
後で電話を入れておこうと思いつつ、良太は料金所を抜けやがて関越自動車道へと入る。
ひたすら飛ばして、ひとまず嵐山パーキングエリアの文字を確認すると、本線から左へと入り、スピードを落とした。
駐車場に車を停め、まず藤堂に電話を入れた。
「そりゃまた大変だ。今、軽井沢に向かってるんだ? そうか、どうせなら俺も軽井沢に行ってそっちで打ち合わせしようか」
「は?」
「ってなわけにも明日は行かないから」
藤堂のことだ、やってしまいそうなところが怖い。
「オンラインで顔を見ながらミーティングと行こう」
「え?」
「じゃ、都合がいい時、連絡してね、良太ちゃん」
「あ、はい、わかりました」
別に顔を見ながらでなくてもとは思うのだが、曲がりなりにも沢村に代理を頼まれている以上、おろそかにはできない。
携帯は五時数分を表示していた。
「もうちょっと待ってから電話してみるか」
良太は車を降りて、サービスエリアに入ると、コーヒーを買ってテーブル席に腰を下ろした。
「何日間か、入院てことになると、俺も仕事あるし、ずっとついてるわけにもいかないし、どうしよう」
そうこうしているうちに時間は五時を十五分ほど回っていた。
工藤を呼び出すと、何回目かでやっと出た。
「あ、工藤さん」
「どこにいる?」
「いやそれが実は、軽井沢の平造さんがぎっくり腰で入院したんです! たまたま通りかかったカンパネッラの吉川さんが連れてってくれたらしくてさっき連絡くれて、今日休みだからついててくれるっていうんで、今、俺、軽井沢に向かってるんで、すみませんが、タクシーで……」
良太はやつぎばやに事情を説明した。
「吉川がついてるんなら、お前が急いでいく必要なんかないだろう!」
いきなり怒鳴られて、良太は思わず携帯を遠ざけた。
「そんな言い草ないだろう! 平造さん、あんたの親みたいなもんじゃん! 心配じゃないのかよ! とにかく! 軽井沢行くんで、よろしくです!」
思わず、カっとなって切ってしまってから、良太は、うわあ、と自分にがっくりする。
「なんでこうなるんだよっ!!」
携帯を握りしめてサービスエリアを出ると、口に出して喚く。
「……あああ……トイレ、行っとこ……」
良太はとぼとぼと歩き始めた。
「ったく、あのバカが!!」
一方、電話を切られ、成田で苛ついている男もまた人目もはばからず声を荒げた。
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