そこへちょうど現れたエンツォが空港へ行くなら送っていくと言ってくれたので、渡りに船と、良太はエンツォの車で空港に着いたのだ。
ところがジェノバの空港へ慌てて良太を追いかけてきた工藤は良太と一緒にいたエンツォを殴り倒した。
どうせならと、秋山らの陰謀に乗った工藤は、良太と三日間の休暇を堪能することにしたのだ。
「殴ったりして、どうすんですか、エンツォ」
ミラノ行きの小さな飛行機に引っ張ってこられた良太はまだぶすくれたまま、工藤に文句を言った。
「ふん、あれしき蚊に刺されたくらいなもんだ。あいつが最初からお前狙いだったのは、スタッフ連中だって知ってたぞ」
「へ? 俺ねらいって…」
「バカヤロウ! やつはバイなんだ。モデルなんかやってる連中に、気安く近寄るんじゃない」
「まっさか…」
どうしてこいつは自分のことにはこうもニブチンなんだ。
工藤は眉を顰める。
「大体きさまは、何度同じ目にあえばわかるんだ!」
「んなこと言ったって、わかるわけないだろっ!」
わかってたまるか! ったくどいつもこいつも!
エンツォに、まさかそういう下心があったとは。
思い返してみれば、やたらとスキンシップの好きなやつだったけど。
「でも、エンツォ殴ったりして、加絵さんとまずいことになるんじゃないですか」
ムスっとしたまま良太は言った。
「ああ、加絵にはよく言っといた。今度エンツォがお前に何かしたらただじゃおかんってな」
鴻池も自分と良太がどんな関係だろうと、吹聴するようなこともあるまいし。
「は? あんた何言ってんだよ!」
良太は聞き捨てならない工藤の言葉に思わず顔を覗き込む。
「だいいち、あのヴィラまた撮影で使うんじゃ…」
「向こうが悪いんだ、何も文句はあるまい。それに撮影とは関係ない。それだけの謝礼はするんだからな」
「だって…」
「まだ何か文句あるのか」
「そりゃ、あんたの女のことなんか、俺には関係ないですけどねっ!」
ふん、と良太は窓の外に顔を背ける。
「お前はバカか」
「どうせ俺はバカですよ」
「昔の女のことなんか持ち出して何の得がある」
「とか何とか、その昔の女と満更でもなかったくせに」
工藤はふん、と鼻で笑う。
良太は工藤を振り返る。
「何がおかしんだよっ!」
「それで加絵を妬きまくってたのか?」
良太はかぁーーっと頭のてっぺんまで真っ赤になる。
そんなところは可愛いものだ。工藤はまた笑う。
「言うに事欠いて、何だよっ、その言い草は」
ふいにキスが良太の唇をかすめる。
「騒ぐな。周りにはた迷惑だ」
「クソバカエロオヤジ!!」
日本語が周りにわからないのをいいことに思い切り言い放った良太に、工藤はニヤリと笑った。
飛行機は一時間もたたずにミラノに着いた。
リナーテ空港からタクシーでホテルに着くと、良太を探している間に衣類の入ったスーツケースを盗られた工藤は一式ミラノで揃えなくてはならなかった。
「んとに、大事なもん、入ってなかったんですかぁ? 警察に届けなくてもいいんですか」
「届けたって戻ってくるもんか。土産と服や靴の類だ」
パスポートやノートパソコンといった仕事上の大事なものは、持っていた小ぶりのブリーフケースに入っていたのだからそう問題はない。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
