Cat&Dog2

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「お~~い、良太ちゃ~~ん」
 なんてすぐ傍で呼ぶ声に頭を上げると藤堂がにこにこと振っている。
「疲れたかな? あと一分張りだからね。もう、バッチシだよ、良太ちゃん。特にこのリヴィエラに入ってから、神がかり的! 飲み物は?」
「あ、いえ、もう……冷たくてオイシイカフェラッテ飲み過ぎで、胃がたっぷんたっぷんしてますよ」
「おやおや、それは災難だったね~」
 他人事のようにのたまう藤堂は、隣に座るとミネラルウォーターをゴクゴクと飲んでボトルを空にする。
「あ、ネコ」
 桟橋の近くを白いネコが優雅に歩いていく。
「心なしか、ここのネコは気品があるな~」
 良太はシッポを立てて歩いていくネコの後ろ姿をぼんやり見送りながら呟く。
「あ~~あ、ナータンどうしてるかな~」
「ああ、君んちのネコちゃんか」
「鈴木さんにご飯やトイレの世話は頼んできたけど、ずっとあの部屋で一人でいるんじゃ、退屈しているだろうな。ストレスになるかも……。うう……かわいそうに!」
 遠く日本の自分の部屋にひとりで寂しくしているだろうナータンに、良太は思いを飛ばす。
「部屋飼いでもネコは上下運動でもさせておけば問題はない」
 いきなり別方向から声がして、振り向くと河崎だった。
 河崎は良太の前に立つと、煙草をくわえながら続けた。
「グッズがあるだろ、いろいろ。でなきゃ棚の上にメシを置いとくとかするだけでもネコの運動になる」
「はあ…、いいアイディアですね。詳しいんですね、河崎さん、ネコ飼ってるんですか?」
「まあな。食事には気をつけろよ。ネコは人間の喰うもんじゃ、塩分が多すぎる。油分も気をつけろ。クリームなんか食わせてるとデブネコになるぞ。ドライフードもいろいろあるが、マグネシウムなんかが多いと結石になりやすい。よく吟味して食わせることだ」
 この顔で猫の世話をしているとはと、良太の中の河崎の印象がほんの少し変わる。
「なるほど~」
「あと、動物病院もよく選べよ。とんでもないのに引っかかると、ボッタクリの上に、ろくな治療をしてくれないなんてことになりかねん」
「わっかりました」
 河崎は言いたいことだけ言うと、さっさとキャビンを出て行った。
「人は見かけによらないっていうけど、ほんとですね~俺、見直しちゃいました、河崎さん。ただ怒鳴ってるだけの人じゃないんですね」
 藤堂はくくっと笑う。
「あいつのはな~ここだけの話…」
 藤堂は手のひらを良太の耳にあてて口を寄せる。
「ほんとはハニーのネコなんだよ。昔、ハニーにあいそつかされてさ、ハニーに戻ってきて欲しいばっかりに、ネコを大事にしてたのさ」
「へえ…。それでその、ハニーって戻ってきたんですか?」
 こそっと藤堂に耳打ちする。
「まあね。もっとも、ネコの知識教えたのは、この俺様なんだけど」
「ふーん。あの河崎さんがね~」
 意外だ~散々遊んでいそうなあの河崎にハニーがいた、なんてことも驚きなのに、そのハニーのネコを一生懸命大事にしてるなんて。
 それに引き換え、ネコなんか二、三日ほっといたって、死にゃしない、とか言っちゃってさ。
 そんなことを平気で言う冷血漢を目で探すと、こちらを睨みつけているような工藤の視線に出くわして、良太はつい、フン、と目をそらす。

 


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