「道路で何か食ってたカラスを、このおっさん、傘で殴りやがって。羽がちょっとやられたんだよ、そしたら、こっちのやつがたーっとやってきて、おっさんの頭つついたんだ。アッタマいいっつーか」
テレビを見ながら豪がボロボロ泣いていることもあった。
「ぜってー許せねー!」
虐待されたりいずれ処分されるという動物のニュースや人間の都合で閉園された動物園から知らない土地に移動させられる動物たち、戦禍の中の、子供たちの映像。
すぐ感情移入してしまう豪の心根は、基本的にひどく優しいのだろう。
元気は豪の横顔を見ながら心の中で感じた。
豪の撮る写真には自然と心を和ませるものがあった。
ひとつひとつが被写体に対する愛情が窺えるショットばかりだ。
そのショットを撮るためには、少々の危険は顧みないところが問題だったが。
「こら、頭引っ込めろ、頭!」
北陸にツアーに出た『GENKI』に豪は姉に車を借りて同行した。
白いゴルフを元気に運転させ、千里浜のドライブウェイを走らせながら、サイドシートのウインドウを開けると、豪はカメラを構えて段々身を乗り出した。
「もちょいだから」
対向車のトラックから激しくクラクションを浴び、元気も慌ててハンドルを切りそこないそうになる。
「バッキャロ! お前と心中なんざ死んでもお断りだぞ!」
「いやあもー、バッチリなショット!」
自分の収穫に夢中で、元気の話など聞いてはいない。
「かんどー! 野生のとび、あんな間近に見たの初めてだぜ! 飛んでる姿もすんげー優雅でさあ」
両の拳を握り締め、豪はとびと遭遇した感動を力いっぱい語る。
散々冷や汗をかかされたのだが、元気も怒るに怒れない、仕方ないなで納得してしまう。
気がつけばしょっちゅう、二人でつるんでいた。
