メリーゴーランド184

back  next  top  Novels


「やっときた、千雪」
 研二が千雪を見つけて呼んだ。
「腹減ったわ~」
 足早にダイニングに向かう千雪の背中を見つめながら、「ただ、あんまり、千雪と京助さんのこと、話題にはせんといてもらえます?」と三田村が理香に言った。
「あら、やっぱり世間体が気になるとか?」
「そうやのうて……ちょっと複雑なんや。千雪と………」
 理香は千雪に優しい目を向ける研二に目をやった。
「あら…………彼、ほんと、カッコいいわよね、研二くん。バツイチって聞いたけど」
「まあ、いろいろあって……」
「そう」
 理香はそれ以上聞かなかった。
 朝食は皆が一斉に席に着くわけではなく、ダイニングにやってきた者から順に、和食か洋食かをスタッフに伝えると、食事を持って来てくれるという有難いものだった。
 研二と千雪、それに三田村はそれぞれ洋食を選んだが、パンにスープ、サラダ、オムレツなどに牛乳やオレンジジュース、ヨーグルトなどもついて豪勢な食事だ。
 和食を選んだ理香は、卵焼きに鮭、みそ汁、のり、サラダとこちらもしっかりとバランスよいメニューになっている。
 ご飯を少なめに、卵焼きを口にした理香は、「何これ、すごい美味しい」と声に出ている。
 コーヒーか紅茶は食後に持って来てくれることになっている。
「ホテルみたい!」
 寝ぼけ眼で、それこそジャージの上下で降りてきたアスカは、和食を選んでから、みんなの食事を見て、思わず口にしていた。
「お前、仮にもモデルじゃなかったのか? ジャージの上下ででかいアクビって、どうだよ」
 キッチンから公一とやってきた京助がすかさずいちゃもんをつけた。
「プライベートで何を着ようと勝手でしょ。ユキ着てるジャージ、探したけどなかなかみつからないのよ」
 確かに、アスカのジャージはスポーツブランドのもので、千雪のジャージとは雲泥の差がある。
「そんなん、スポーツブランドなんか行ったかて、俺のジャージがあるわけないやん。これはうちの近所のマイナーなスーパーで見つけたレアもんや」
 千雪が偉そうに言う。
「ええ、教えてよ、そこ。買いに行くから」
「アスカさん、ひょっとしていわゆるファン心理? 名探偵と同化したいいう?」
 三田村は口を出さずにいられなかった。


back  next  top  Novels