「悪い? でもジャージってラクなんだもん。ちょっとコンビニ行くんでも、部屋の中でもどこでも着てられるし」
「それは言えとる。ほんまにラクや」
部屋から降りてきて、その会話を聞きつけた佐久間が、「いくら何でも、人気モデルさんは、ブランドもんてとこでやめといた方がええんちゃう?」と窘めた。
「何せ、先輩のジャージ愛は偏屈極まりないよって、何せ、絶対あり得へん色の組み合わせとかわざわざ考えて、しかもオヤジかジジイしか履かんようなスニーカーならぬ運動靴を探し回って悦に入ったはるんでっせ?」
「知った風なことを言いよって。人がカッコええんを追求するんとは真逆にカッコ悪いんを追求すると、色々とおもろいことがわかるいうもんや」
オムレツを口に運びながら千雪が言った。
「おお、うまそう!」
伸びをしながら降りてきた辻は、皆の食事を見回して声を上げた。
辻の後ろから速水がやってきて、「和食も洋食も捨てがたいな」と呟きながら辻の横に座った。
「あれ、お嬢ちゃんは?」
三田村がほぼそろった顔ぶれの中に日向野がいないことに気づいた。
「さっきのでもう顔を出すのが怖くなったんじゃない?」
理香が言った。
「何だ、さっきのって」
京助が聞きつけて理香を見た。
「京助は首突っ込まない方がいいことよ」
「おい、俺は一応管理責任があるんだ、女一人何か起こってからじゃ………」
言いかけた京助は、出かける装いで階段を降りてきた日向野を見つけた。
「あら、日向野、どこか行くの?」
理香が声をかけた。
「帰ります。荷物は送ってもらうように手配しましたから」
それを聞くと、京助はさすがにイラつきも限度を超えた。
「あんた、人の別荘に勝手に押しかけて、勝手に帰りますとはどういう了見だ?」
「お部屋代やお食事代お支払いすればよろしいんですの?」
呆れた切り返しに、朝食を取っていたメンツは苦笑せざるを得なかった。
「いいか、ここはホテルじゃない。俺のうちの別荘だ。人んちに厄介になる時は、よろしくお願いします、帰る時はお世話になりました、だ。幼稚園でそんなことも習わなかったのか?」
するとみるみる日向野の顔が真っ赤になり、眉がつりあがる。
「……お世話になりました!」
日向野は言い捨てて玄関を出て行った。
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