メリーゴーランド212

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「あれやな、初めてやな、研二とサシ飲みとか」
「……せやな。誰かしらおったもんな」
 何気ない千雪の言葉に、研二はためらいがちに同意した。
「みそ汁、美味いで」
「焼き物はどや?」
「うん。まあ、美味い。ぶりの照り焼き?」
「要検討いうこっちゃな」
 研二もぶりを口にして頷いた。
「煮物は絶品!」
「よっしゃ」
 それぞれの器のものを評しながら食べ終えると、酒をまた注ぎ合う。
「この膳、絶対ええんちゃう? この後に菓子とお抹茶が出るんやろ?」
「それが一式やな。まあ、曜日を決めるか、月三回くらい、茶懐石膳の日にするか」
「回数少ない方がありがたみが大きいんちゃう?」
 研二は笑った。
「それに予約制にせんと、大変やろ」
「まあ、そや。茶懐石の日を決めといて予約受ける、いう感じかな」
 こうしてしっかと新しい店のことを考えている研二に対して、千雪はいつまでも昔のことでぐじぐじしている自分がひどく情けなく思えた。
「研二がこないして一生懸命新しい店のことを考えとるのに、俺なんか、いつまでも拗ねてて情けないわ」
 研二は千雪を見た。
「いや……俺も、千雪に言わんと悪かったわ。勝手なことしてもうて、お前が怒るやろ思て、ついな」
「もうええわ。昔のことやもんな。今何言うたかて、昔に戻れるわけでもないんやし」
「……せやな……」
 研二は苦笑いした。
「あ、でも、これからは隠し事はナシやで?」
「お、おう」
 千雪は少し躊躇した研二の顔を見つめ、切なくなった。
「昔に戻れんでも、研二、また真由子さんの具合がようなったら、またやり直せるんやない?」
 すると研二は眉を顰め、千雪を見つめ返した。
「俺は、研二がこっち来て、またこうやって話せるようになって嬉しいばっかでかんにん。研二は子供らにも逢いたいやろし、一人できついんやもんな」
「……千雪」
 研二は渋い表情になった。
「子供らとはたまに、真由子がネットで話させてくれるし、もう少しおおきゅうなったら、京都やこっちにも連れてきてええてことにはなっとるんや」
「そうなん?」
 研二はようやく表情を緩めた。
「ほな、真由子さんの調子がようなったら、こっちでみんなで一緒に暮らしたらええやん。この部屋、芝さんが家族でも暮らせるように思て、貸してくれたんやろ?」
「真由子とは………もうあかんのや」
 千雪の言葉に研二はまた苦い顔をすると、絞り出すようにして言った。


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