春の夢68

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「答えになってないね。俺なんか、メチャクチャ便利だと思うぜ。怪我や病気があってもすぐ診てやれるし、銃も扱えるからボティガードにもなる。運転手して毎日送迎もできる。ベッドの中でもいくらでもガードしてやるぜ。そうすりゃ、青春真っ盛りの坊やもフラストレーションもなく快適ライフが送れるってやつ」
 聞いているうちにロジァはまた頭がカッカしてくる。
「寝言は寝て言え!!」
「ハハ……そいつは名案だ、寝て言ってやるよ」
「……!! てめーは…」
 そんなことを言い合っているうちに、アレクセイの車は彼のアパートメントの駐車場に滑り込んだ。
「さっさと降りた降りた。また傷口掴まれたかないだろ?」
「こんなとこに連れてけなんて誰が頼んだ!!」
「お願いだから、ダダこねないで下さいよ、ボス」
 ふざけやがって!!
 ここであのニヤケやろうと嬉しそうにキスしてたのは誰だよ。
 ロジァは心の中で問いかける。
 それなのに、何で俺に、あんな時に、愛してる、なんて言うんだ。
 部屋まで連れられてきて、足が竦む。
「ボルシチ食わせてやるよ。昨夜から煮込んどいたんだ」
 アレクセイは髪を後ろで結わえ、エプロンをしてキッチンに立つ。
 のっそりとアーニャが擦り寄ってくる。
「座れよ、坊や」
 アレクセイはグラスやナプキンをテーブルに用意しながら、立ったままのロジァに言った。
 美味そうなボルシチの匂いが部屋中に漂う。
 アレクセイは硬いバケットをナイフで切って皿に並べ、チーズの塊をスライスする。
 その間にもアーニャに食事をやるのを忘れない。
 バターケース、オレンジやアボガドなどを一緒にテーブルに並べ、熱いボルシチを入れた皿を二つトレーに乗せて持ってくる。
 最後に赤ワインを持ってきて、エプロンを取った。
「快気祝いな」
 アレクセイはワインのコルクを抜いた。
 コクコクとグラスに注がれる赤い液体を見つめ、ロジァは胸を切なくする。
 ガードなんかいらない。
「カンパイ」
 アレクセイはやけに陽気だ。
 グラスを持っただけのロジァのグラスに自分のグラスを合わせる。
 そして一口飲むと、ロジァをじっと見つめた。
「どうした? 飲まないのか? 今夜のために買っといたシャトー・ラトゥールだぜ」
 あいつにもそんな風に言うわけだろ?
 ひどく息苦しい。
 でなくてもいろんな女、いるじゃないか。
 ロジァはむっつりしたままグラスを口に持っていく。


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