「プロフィールには書いておりませんが、仕事のない時は美亜と私は動物保護のNPO法人で活動いたしております」
水谷がしっかりとした言葉で答えた。
「そうなんですか?」
意外な事実に、良太は水谷と美亜を交互に見た。
「いや、実は、水谷さんはうちからミタエンタープライズに出向してもらっておりまして、NPO法人の主宰は彼女なんです」
なるほど、それでわかった。
良太は心の中で頷いた。
あのミタエンタープライズが、売れっ子とは言い難い美亜にこんなしっかりしたマネージャーを専属でつけているのが不思議だったのだ。
それ以外にも忖度勘定が働いているのだろう。
調べてみれば、海老原兄妹の祖父は元外相、政治家の家系で、海老原の父親は代々の不動産業を生業にしたが、その兄、海老原の伯父は衆議院議員だ。
財界と政界、いずれにしても海老原美亜はミタエンタープライズにとって繋いでおきたい縁なのだろう。
「ほら、レッドデータアニマルズ、自然からの警告って、ドキュメンタリー番組、制作されましたよね? こちらの会社で。あれ、すごく感動しました」
頭の中であれこれ考えていた良太に、美亜が唐突に話しかけた。
「あと、知床の自然のドキュメンタリーも観ました! あたし、すごく感激して」
美亜は少女のような笑顔で目をキラキラさせて訴える。
「ありがとうございます」
良太も自然と笑顔になる。
海老原兄の印象とは真逆じゃないか。
ボキャブラリーが少ないのもおそらく英語が主体だからなのだろうと、勝手に想像する。
「海老原が御社からのご依頼をいただいた時に、たまたま美亜が私のところに遊びにきていて、それで御社の制作されたドキュメンタリーの話を聞かされまして、ちょっとでもいいからドラマに出たいとせがまれた次第です」
こうやって改めて話してみると、野口は好感が持てる人物だった。
美亜や水谷との会話も穏やかで、店のことも海老原は海外にいるようだし、野口が担当ならやりやすいだろうと、良太は思った。
その時、オフィスのドアが開いた。
「あ、お帰りなさい」
工藤がいきなり現れたので、良太はちょっと驚いて立ち上がった。
京都の撮影終わるまで向こうって話じゃなかったんだ?
「関東エクスプレスでトラブルだ」
「え……」
関東エクスプレスは物流大手で、青山プロダクションのメインスポンサーの一つ鴻池物産傘下にある企業だ。
鴻池物産グループ代表取締役を務める鴻池和路は、工藤の大学、MBCでの先輩にあたり、工藤をバックアップしてきた男だ。
back next top Novels
