だが工藤に対する執着が半端なく、工藤が良太を大事にしていることが気に入らず、良太を工藤から遠ざけようと画策して、工藤の怒りを買ったことがある。
ただし恋愛的な意味での執着ではないらしい。
が、以来良太は鴻池に対して未だに完全に許すことはできないでいる。
工藤もそれをわかっているので、鴻池関連の仕事は良太に回さないようにしていた。
「どこの代理店を使ったんだか、ギャラでタレントの事務所とやり合ってCM撮影がペンディングになったらしい。よほどにっちもさっちもいかなくなったんだろう、さっき鴻池が俺に泣きついてきた」
ほんとかな。
良太は工藤の話を全て鵜呑みにはできなかったが、工藤がこうして戻ってきたということは、もうギリなのだろう。
工藤は自分のデスクに行くとコートを脱いで、電話を掛けようとして、来客に気づいた。
「誰だ?」
「あ、坂口先生のドラマに出演する予定の美亜さんが挨拶に来てくださったんです」
「美亜?」
掛けようとしていた電話を一旦置くと、工藤は来客の方へと歩み寄った。
立ち上がった三人に、「社長の工藤です」と良太は紹介し、「美亜さんとマネージャーの野口さん、ランドエージェントの野口さんです」と工藤にそれぞれ紹介した。
「はじめてお目にかかります、ランドエージェントの野口と申します」
名刺を交換すると、「この度は弊社の『ギャット』をドラマでご利用いただく上に、美亜をドラマに出演させていただけるということで、ご挨拶に伺った次第です」と野口が工藤に説明した。
「こちらこそ、何かありましたら広瀬が対応致しますので、よろしくお願いいたします」
言葉上は丁寧な言い回しだが、へいへい、俺に丸投げですね、と良太は心の中で悪態をつく。
野口が二人を促して帰って行くと、工藤はデスクに戻った。
「何か、お手伝いいたしましょうか?」
既に終業時刻は過ぎていたが、鈴木さんも突発事項だろうと気を利かせて工藤に声をかけた。
「いや、大丈夫ですよ。お疲れ様です」
工藤に言われて鈴木さんが帰って行くと、早速工藤は電話をかけ始めた。
「鴻池グループの関東エクスプレスなんですがタレントの事務所とトラブって代理店がバンザイ状態で、もし、多少の余裕があれば」
三度目の相手らしい、と良太は聞き耳を立てた。
既に二度断られているのが聞こえていた。
社長の鴻池自身が泣きついてきたというのだ、よほど切羽詰まった状態なのだろう。
「そうですか、申し訳ない。ではお待ちしてます」
どうやら三度目の相手は受けてくれたらしい。
「良太、ちょっと着替えてくるが、上がるんならあとでプラグインが来るからオフィスは開けといていい」
工藤はコートを掴んでデスクを立った。
「藤堂さんですか?」
「ああ、河崎と三浦と三人だ」
ほぼプラグイン総出である。
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