「工藤さん、食事まだですよね? 出前とりましょうか? 俺も腹減ったんで、何にします?」
時刻は六時になろうとしていた。
「何でもいい」
工藤はたったかオフィスを出て行った。
「そうでもしないと、工藤、食事もとらないで動くからな」
ブツクサ口にしながら、良太はちょっと考えてから、「やっぱ鰻かな」と電話を取った。
プラグインの面々がやってきたのは、ちょうど工藤と良太が食べ終えて、良太がお茶を入れている時だった。
良太は緑茶をコーヒーに切り替えて、人数分入れると、窓際のテーブルへと持って行った。
「お世話になります」
プラグインの面々の前にコーヒーを置くと、良太はキッチンに下がり、器をおかもちに戻してから自分のデスクに戻った。
この件にはお前は関わらなくていいと食事の途中で良太は工藤に言われている。
おそらく鴻池絡みだからということだが、別に今さら仕事を手伝うくらい問題ないのに、と良太は思う。
藤堂も一緒にやってきたが、あくまでもいざという時のためにで、藤堂は明日打ち合わせが待っている東洋グループのCMプロジェクトが優先だという。
聞こえてきた内容からすると、既にプラグインは関東エクスプレスとは連絡を取り、新しいCMキャラクターとして、主役級のアラフィフ俳優で、先頃あちこちで賞をもらったりして人気度も高い、三好公成に依頼をしたところ、藤堂とは旧知の仲らしく急遽の要請にもオフ日を充てられるということでOKをもらったところだという。
元々オファーされていた俳優は、やはり三好公成と同年代で実力派俳優末次正芳だったのだが、ギャラの件で代理店側が提示額を誤伝していたことが分かり、事務所側は取り付く島もなかったらしい。
代理店側は末次に代わるタレントを何人か探してきたようだが、関東エクスプレスの社長が頑として首を縦に振らず、広報部長が鴻池に泣きついて、鴻池が工藤に泣きついたというわけだ。
かろうじて末次の撮影には至っておらず、かといってギリの状態と言われて、工藤も仕方なく京都から舞い戻ったのだろう。
「とりあえず今から現場を見に行きますか」
藤堂の言葉で、皆が立ち上がった。
「良太、オフィスは閉めていいぞ」
そういう工藤の背中から明らかに疲労を見て取って、良太は自分が何もできないことが歯がゆい。
「はい、行ってらっしゃい」
工藤に声を掛けて立ち上がった良太は、ちょうど最後に出て行こうとした藤堂をつかまえると、どこ行くんですか? とこそっと聞いた。
「横浜港」
「はあ……。CM誰が創るんですか?」
「ジャストエージェンシー。さっき声かけて向こうで落ち合うの」
「頑張ってください」
藤堂はニコッと笑って出て行った。
「ジャストエージェンシーって、確か、佐々木さんとか直ちゃんの会社だよな?」
まあ、急な仕事を受けてもらえるところがあってよかった、と良太はしばし皆を見送ると、ふうっと息を吐き、電源を落としてオフィスを閉めた。
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