春立つ風に43

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 すぐさま猫たちのナアナア攻撃を受けると、ご飯をやり、トイレを片付けてから、コーヒーをセットした。
 昨日のうちに買っておいたサンドイッチと一緒にコーヒーを持って隣の部屋にまた戻る。
 工藤は髭をあたり、あらかた身支度を済ませて、ネクタイを結んでいた。
「サンドイッチとコーヒー、食べる時間くらいあるだろ?」
 返事をしない工藤に、「ちょっとでも食べろよな!」と捨て台詞のように喚いて、良太は自分の部屋に戻って行った。
 工藤はバタバタと出て行く良太を、フン、とまた鼻で笑った。
 自分の部屋に戻ると、良太は落ち着いたダークグレーのスーツに、ネイビーのドットタイを締めた。
 サンドイッチを齧りコーヒーで飲み込むと、コートとブリーフケースを掴み、慌てて部屋を出た。
 オフィスに降りていくと、ちょうど鈴木さんが来たところだった。
「おはようございます。今日は早いのね」
「うう、今日も寒いですぅ」
 鈴木さんは笑いを浮かべながらすぐに灯りをつけ、空調を入れた。
 デスクに向かうと、良太はノートパソコンの電源を入れた。
「今日は忙しいのね?」
「いやあ、忙しいというか、午後の打ち合わせに備えて準備を」
 昨年アディノのCMで沢村がイメージキャラクターに起用されたが、その際、沢村がマネジメントの窓口を良太に押し付けたために、今回東洋グループの次期CEOである綾小路紫紀から良太に直々に今回の沢村を起用したいとオファーされたのだ。
 代理店はプラグイン、担当は藤堂、クリエイターは佐々木にという指定である。
 何とかOKを取り付けた良太を待っていたのは、沢村のマネジメントだけでなくプロデューサーをお前がやればいいと軽い調子の工藤のお達しだった。
 東洋グループの今年度のイメージCMとあって、今日の打ち合わせには東洋グループの重役が顔を揃えるわけだが、沢村のプロフィールやアディノのCMに関するデータ、制作会社やロケ候補地に関する資料などをまとめて会議に持って行かなくてはならない。
 それをもう一度読み直す必要があった。
「どうぞ」
 鈴木さんが入れたてのコーヒーを良太のデスクに置いた。
「あ、ありがとうございます」
 その時工藤が入ってきた。
「おはようございます、コーヒーお飲みになります?」
「いや、すぐに出かけるので」
 工藤は電話を一つ二つかけると、コートを持って立ち上がった。
「良太」
 ドアに行きかけて、工藤は良太のデスクに歩み寄った。
「はい?」
「いいか、海老原には必要以上に近づくなよ」
「え?」
 工藤は良太にそれ以上口にすることなくドアを開けた。
「行ってらっしゃい」
 良太も小さい声で行ってらっしゃいと言ったものの、何それ? と小首を傾げた。

 


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