デジャビュ?8

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「まあな、外見は母親、中身は父親ってやつ? ズボラでマイペースで、あのオカンにはそれが逐一癇に障ったんやないか」
 佐々木は自虐的に言う。
「いやあ、それにしてもなかなか鋭いご指摘」
 沢村にしてみれば、あそこまでビシバシ言われる経験が少なかった。
 監督か、淑子かというくらいだ。
「フン、ちょっとやそっとじゃ、あのオカンに太刀打ちできるようにはならんで……」
 うっかりそんなことを呟いてから、佐々木はだから何で沢村がオカンに太刀打ちできるようになる必要があるんや、と自分で突っ込みを入れる。
「確かに、お母さんに認めさせるにはちょっとやそっとじゃ、色々勉強しないことには」
 ソファにもたれて目を閉じていた佐々木だが、身体を起こして掃除機をかけようとしている沢村を見た。
「せやから、何でお前がオカンに認めさせなあかんね」
「そりゃもちろん、佐々木さんと付き合うのにはお母さんに気に入ってもらわなけりゃ」
 その時佐々木はふと妙な既視感に襲われた。
 沢村とまだ出会って間もない頃のことだ。
 母親に紹介するのがこの大きな男だったりしたらなどと考えて、その時はそんなことを考えたバカバカしさに自分を笑ったものだが。
 今、こうして現実となっている事実に、佐々木は少し途方に暮れた。
 いったい……
 いったい、この沢村とこれからどうしろというのだろう。
 昨日はこの男についほだされたような形になったものの、いや、確かに自分が沢村のことを好きだという事実は認めたものの、だからどうだというのだ。
 この先この男と末永くつき合っていくなどとあり得ないだろうことはよくわかっている。
 いつかこんな関係に幕が下りることは、もう友香のことで十二分にわからせられたのだ。
 永遠の愛などという絵空事をいまさら信じる気力もない。
 先のことは考えないようにしよう、今はこの沢村を好きなのだから、と割り切ろうとした矢先、まさか母親に紹介することになろうとは思いもよらなかった。
 そんなつもりは毛頭なかったのに。
 やがて掃除機の音が止み、沢村は掃除機を片付けて戻ってきた。
「あんたが何を考えているかわかってる」
 急に沢村が言った。
「俺なんかお母さんに紹介したところで何になるって思ってるだろ」
 まっすぐに沢村は佐々木を凝視した。
「残念ながら俺はメチャしぶといから、否が応でも俺をあんたのお母さんに認めさせてやる」
 そう言いながら沢村は佐々木に近づいてその首筋に手を伸ばす。
「可愛い嫁じゃないが、俺はあんたの傍から絶対離れるつもりはないから」
 ゆっくりと佐々木の首から頬へとさすりながら沢村はさらに近づき、佐々木の前に膝をついた。
 軽く啄ばんでいたキスが次第に深くなる。
 熱を帯びたキスは佐々木の心を少しだけ甘くする。
「いや、でも、俺十分健気で可愛い嫁だと思わないか」
 佐々木の目を覗き込んだ沢村に、アホか、と佐々木は笑った。

 


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