デジャビュ?7

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 友香と結婚する時には、もともと父親が使っていたこの離れを、佐々木は二人のための新居として改装したのだが、友香が去ってからは友香がアトリエとして使っていた十畳ほどの居間はほとんど使うこともなく、大抵は同じく十畳ほどの自分の部屋だけで暮らしている。
 学生の頃は油絵を描いたりしていた佐々木の絵の道具は居間に置いてあるが、ソファとテーブルくらいしかないがらんとしたその空間は未だに佐々木にとってはあまり居心地がいいものではない。
「へえ、こっちが佐々木さんの寝室?」
 勝手に入るなと言う前に、沢村はドアを開けて中へと足を踏み入れた。
「お前、もういいから帰れ。浩輔からバッグやら引き取ってこなあかんし、オフィスも寄ってみな」
 佐々木が受話器を取り、浩輔の携帯をコールしている間も、話を聞いているのかいないのか沢村は寝室の中を眺め回していた。
 窓の外はダイニングから降りられるパティオのようになっていて、石を敷き詰めてテーブルセットを置いたり、洗濯物を干したり出来るように造ってみたのだが、シンボルツリーとして植えたハウチワカエデがもうかなり高くなった。
 それでも窓の陽ざしを遮ることもなく、明るい書斎の大きなデスクには愛用のパソコンが二台並び、ラフやら資料やらが散らかり、本がソファやらあっちこちに積み上げられたり広げられたままになっている。
 奥の寝室にあるキングサイズのベッドはかろうじてカバーがかけられているものの、服が放り出したままだ。
 友香が出て行ってから、さすがにベッドを取り替えようかとも思いながら、結局はものぐさな性分がそのまま使わせている。
「あ、浩輔、悪い、預けてるものを引き取りたいんやけど」
「佐々木さん、今どこです? 沢村さんも一緒です?」
 幾分躊躇いがちに尋ねた佐々木だが、明るい浩輔の声が妙に気を回すこともなく返ってくる。
「あ、ああ、今、うちや。今日は大掃除で」
「だったら、あとで寄りますよ。一時間後くらいでいいですか? 俺、今からスタジオなんです」
 どうやらプラグインの仕事納めはまだのようだ。
 車の中だったらしく、わかったと言うと携帯はすぐに切れてしまった。
「あとで浩輔が寄るって言うし、沢村?」
 振り返ると沢村がいない、と思ったら掃除機を見つけ出して戻ってきた。
「お前はええから、俺がやるし」
「いいから、佐々木さんは休んでて」
 疲れさせた罪滅ぼしとでも思っているのだろうが、佐々木は実際かなり身体にがたがきている。
 母親の前だったので何とか持ちこたえたものの、本当は今すぐにでもベッドに入って眠ってしまいたいところだ。
 佐々木はソファに腰を下ろして背もたれに背中を預けた。
「ほな、何も動かさんでええから、見えてるとこだけさっとやってくれたらええ」
「了解。しかしお母さん、お若い頃は絶世の美女だったな。いや、今でも十分美人だけど、佐々木さんよく似てるし」
 今更ながらに感心したように沢村が言った。
 


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