「こんばんは、佐々木さん」
ソファで沢村に抱き寄せられ、その肩に頭を乗せてまったりとしていた静寂がやがて元気な浩輔の声によって破られた。
佐々木は思い切り沢村を押しやった。
「お邪魔します~」
勝手知ったるで浩輔は上がってきたと思うと、トントンと部屋のドアをノックした。
「入れよ、すまんな、厄介かけてしもて」
「こんばんは~」
ソファの横に突っ立っている沢村にもちょっと頭を下げると、浩輔は持ってきたバッグとジャケットを佐々木に渡しながら、その横に腰をおろす。
「携帯、バッグの中に入ってます」
「おおきに。コーヒーでも飲むか?」
「いえ、もうオフィスに戻らないと、そこに車停めてますし。それより、沢村さんも、明日ってスケジュール空いてませんか? 実は明日ならスタジオ使えるみたいで、お二人の衣装合わせとリハ、やらせていただければ」
「明日? 大晦日に仕事やなんて、浩輔、河崎さんのワーカホリックが移ったんやないか?」
「やめてくださいよ、たまたまさっきスタジオ行った時、聞いてみたら、年明けは×だけど明日ならOKって話になって」
佐々木がからかうと頬を紅潮させた浩輔がむきになって言った。
「俺は別に何も予定していないからかまわない」
沢村が言った。
「じゃ、明日十時ってことで、よろしくお願いします」
さっさか立ち去ろうとした浩輔を、ちょっと待て、と沢村が呼び止めた。
「はい?」
「すぐそこに車停めてるって、お前、どこから入ってきたんだ?」
抜け目なくそんなことに気づく沢村に、佐々木は心の中で舌打ちする。
「え、いつもそこの裏木戸から。表に回るより全然早いし、うっかりお母さんに捕まると何かとね……」
沢村は浩輔のあとについて外に出ると、裏木戸を確かめに行った。
「それじゃ、明日、こないだのスタジオまでお願いします」
浩輔が車を出すのを見てから戻ってくるとすぐ沢村は、「俺に教えてくれなかった」と佐々木に文句を言った。
「裏木戸なんか使う必要ないだろ」
「今まではね」
そういいしな、沢村はまたソファの佐々木を抱きしめ、またキスを浴びせる。
「今夜ここにいちゃダメかな」
キスのあとに沢村がボソッと言った。
「あかん」
即答されて沢村はちぇ、と不服そうに呟く。
「つれねぇの」
「俺はとにかく眠りたいんや」
沢村は佐々木にまたひとつキスを落とす。
「鍵、ほしいな」
「調子にのるな」
「いいだろ、そのくらい」
そんな言い争いをしているところへ、電話が鳴った。
仲田からで食事の支度ができたから母屋に来るようにと言ってきた。
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