Winter Time16

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    ACT 3
 

 狭い階段を上がった二階が指定された居酒屋だった。
 工藤と一緒にスポンサーへの挨拶回りを終え、慌ててタクシーを拾ったが、約束の時間を三十分以上は過ぎている。
 工藤には、高校の同級生と久しぶりに会うのだと一応報告しておいた。
 その工藤は今夜もスポンサーに引っ張り出されている。
「きたきた、おっせーぞ! 良太」
 肇が大柄な体を揺すりながら良太を手招きした。
「久しぶり~、良太、すっかり業界人になっちゃって、見違えちゃった」
 肇の隣でかおりが笑った。
 栗色にカラーリングされたきれいな髪を揺らした彼女はやはり美人だが、どこから見てもすっかり大人の女の雰囲気だ。
 細身にサーモンピンクのスーツがよく似合っている。
「久しぶりだなぁ、かおりちゃんこそ、何かさらにキレイに磨きがかかった? おい、肇、何だよ、すっかりリーマンしてんじゃないかよ」
「やだ、良太ってば、お世辞なんか似合わないわよ」
「るせーな、業界と比べるんじゃねー、こちとら地道にあくせく働いてんだよ」
 ガッシリ体系は変わらないが、もともとオッサン臭かった肇の顔が年相応になっている。
 向かいに座らせられた良太は、二人から交互に質問攻めにあうことになった。
「ふーん、じゃあ。親父さんもおふくろさんは今熱海で、亜弓ちゃんは静岡にいるんだ。ほんと、金だよな、この世知辛い世の中。しっかし、良太が業界ね~、しかもCMなんかまで出やがって、泡食ったなんてもんじゃないぞ、初めて見たとき」
 ジョッキのビールをグイッと飲むと、肇がしみじみと言った。
「そう、そう、私も会社のお昼休み、みんなで携帯見てキャーキャー言っちゃったわよ、そうすると、何? あの、中川アスカともお知り合いってわけ?」
「お知り合いってーか、うちの会社のタレントだから…」
「おっと、良太、空だぞ、グラス。あ、ちょっとおにーさん、ここ久寿玉ヒヤで二つ追加ね」
 最初は美人に磨きがかかったかおりにちょっと緊張していたものの、いい加減酒が入ってくると、すっかりいつもの良太だ。
「だからぁ、うちは小さい会社だからさ、俺なんか運転手兼秘書兼電話番兼ってやつでさ、なーんでもやんなくちゃなんねーわけ。しかも時間もあってないようなもんだし、あれはたまたま、CM出演予定のやつが怪我したっつーもんだから~ あ、でも、うちの社長は切れ者なんだぜ、すっげーカッコいい」
 酔っているからこそ口から飛び出したセリフだ。
「ほーんとぉ? でもカッコよかったよ、良太も! うん!」
 かおりにそんな風に断言されて、良太はへらっと笑う。
「いやあ、かおりちゃんにそういってもらえるだけで、俺、さいっこうにしゃーわせっ!」
 さらに調子に乗ってグラスを空けた良太だが、会社で鍛えられているのか、肇も景気よく飲むし、かおりなど、男二人よりずっと強そうだ。
 居酒屋でかなりできあがった三人はショットバーでまた軽く飲んだあと、いきなり肇が、良太の部屋に行こう、と言い出した。
 かおりも賛成、とばかりに六本木のバーを出て乃木坂の方へちんたら歩いてきた。
 酔っ払いには寒さも何のそのというやつだ。
 

 


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