野球部でピッチャー、しかも直球勝負がモットーだったという良太らしく、今はひたすら工藤の背中を追いかけながら、プロデューサーとして研鑽を積んでいるわけだが、何かあれば怒鳴りまくってキャスティングに見合わないとなれば有無を言わせずクビを切る、業界では鬼の工藤と称された工藤より、万が一仕事に支障をきたすような場合は理路整然とシビアに切り捨てるところは、ともすると工藤よりクールだ。
良太の最も重要事項は工藤だからだ。
良太の本音は、工藤の仕事にケチをつけられるとか、言語道断というところか。
何だかんだ文句を言いつつも、とにかく雛鳥の刷り込みのごとく良太は工藤を慕っている。
「このあとも、仕事なん?」
「あ、いや、ちょっと、人と会うんです」
「何や、今、一瞬、戸惑いが見えたで? 誰と会うん?」
良太はむすっとした顔で、「直子さんですよ、佐々木さんのアシスタントの」と言う。
「俺に言いにくいいうことは、何や後ろめたいことやろ? 工藤さんの居ぬ間に女の子と会うとか、浮気やな?」
「俺がそんなことするわけないでしょうが!」
ちょっとつつくと、良太は声を大にして否定した。
「ってか、浮気とかいうような関係じゃないんで、俺と工藤さんは」
などと言う良太は、ことあるごとに工藤と自分は恋人という関係じゃないことを強調する。
未だに、大昔、工藤が千雪と知らずにちょっかいをかけたことがあると知って以来、工藤が好きなのは千雪で、自分ではないのだと思い込んでいる節がある。
一次千雪は良太に完全に誤解されて敵対視されていたようだ。
まあそれは、縁は切っているとはいえ指定暴力団組長を伯父に持つ工藤が、良太を縛り付けてはいけないというような理由で逡巡しているが故に、この二人はどこかすれ違いを起こしているのだと千雪は思っている。
「いろいろあるんです。主に俺の悪友と佐々木さんのことで、直ちゃん悩んでて」
良太の悪友とは、プロ野球関西タイガースの四番を打つ人気スラッガー沢村で、佐々木とのことは年明けのスキー合宿の時、露呈していた。
「そうなん。そらまあ、よう話聞いたったらええ」
「で、何なんです? 何か用があってきたんですよね」
良太が話を戻した。
「京助がな、このクソ忙しい時に、毎年それわかっとるやろって時に、来週末空けとけとか命令しよってからに」
「ちょうどクリスマスイブとクリスマスで、ごくごく普通じゃないですか。いつもの京助さんと千雪さんが普通とかけ離れてるだけでしょ?」
「よういうわ、お前かて、似たようなもんやろうが」
「俺には別にクリスマスに一緒に過ごそうなんて相手はいませんから」
あくまでもそう主張する良太だが、工藤がクリスマスだ正月だなんてことは関係なく東奔西走している限り、この二人も千雪等と似たようなものだ。
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