はっぴぃばれんたいん9(ラスト)

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 用意しようと向かう浩輔を横目に、河崎は浩輔が見つめていた鍋のふたを取る。
「…そうだな。こいつ食うか」
 浩輔はぱっと表情を明るくする。
「金目だいの煮つけもありますよ」
 浩輔はいそいそと皿にのせた金目だいの煮つけと、温めたポトフをスープ皿に盛りつけ、河崎がソファでくつろいでいるリビングのローテーブルに運ぶ。
 グラスを用意して、焼酎やお湯の入ったポットを持っていくと、河崎は浩輔からグラスを取り上げ、自分で焼酎を注いだ。
 河崎が浩輔用のグラスに焼酎を注いでいると、チビスケが足元にきて、ちょこなんとお行儀よく座る。
「お前も食うか?」
 河崎がチビスケに声をかけると、チビスケは頂戴、というようににゃあと鳴く。
「さっきあげただろ、ちび。しょうがないな、おいで」
 以前、河崎が面倒をチビスケの面倒を見ていた時、尿路結石になったことがあるらしいし、猫には人間用の味付けのものは絶対やってはいけない。
 だから、チビスケ用に味をつけないで湯に通したたいを作っておいた小さな鍋から一切れ、チビスケの皿に載せてやると、足元にまとわりついていたチビスケは、早速はぐはぐと食べ始める。
「うまいぞ」
 リビングに戻ると、河崎は既に食べ始めていた。
「よかった」
 浩輔はほっとして、河崎の向かいに座り、自分も箸をつける。
「悪かったな」
 しばらくもくもくと食べていたが、ボソリと河崎に言われて、え、と浩輔は河崎を見つめる。
「せっかく作って待っていたのに」
 河崎は手酌で焼酎を注ぎ足しながら、浩輔にわずかに微笑む。
 面と向かってそんなことを言われると、やっぱり照れくさい。
「今日はバレンタインデーだったけど、河崎さん、チョコ嫌いだって言うから……」
 もう、一時を過ぎているから既に昨日になってしまったけれど。
 真っ赤になって俯く浩輔を見つめていた河崎だが、おもむろに立ち上がると、浩輔の腕を掴んで、そのまま寝室に向かう。
「あの、河崎さん…、ちょ…」
「寝るぞ」
「え…でも、片付け…」
「んなもの、後でいい」
 ベッドに二人で倒れこむと同時にドアがパタンと閉まる。
「でも…かわ…」
 息もつげないくらいのキス。
 パジャマ代わりのスエットをぱっぱと脱がせると、河崎は堪え性のないティーンエージャーみたいな性急さで浩輔を抱き始める。
 オフィスを出る藤堂が耳元で囁いた言葉を思い出して、浩輔は一人で恥ずかしくなった。
 だがそのうち頭の中も体も河崎で一杯になり、十日ばかりほうっておかれた体は、恥ずかしげもない声をあげてしまう。
「ざまあないよな…」
 波が引くように息がおさまりかける頃、河崎はポツリと口にする。
 その腕の中で目を上げた浩輔は訝しげに河崎の唇を見つめる。
「お前の前でカッコつけようなんて思ってて、肝心のお前の心を見落とすとこだった」
「そんな…こと…ない…」
 いつだって河崎はみつけてくれる、自分のちっぽけな心を。
「でも、ごはんはちゃんと食べてくださいね。仕事先でも。それだけはきっちり約束してください!」
 河崎は笑う。
「わかったよ…」
 河崎は浩輔の首筋に唇を寄せた。
 
      - おわり -

 


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