夏休み14

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 近くの喫茶店で藤堂が切り出した話は、良太には寝耳に水だった。
「何で?! 鴻池が小林さんを? 一体どういうことなんですか?」
 つい声が大きくなってしまった。
「やっぱり君も知らないのか。鴻池さんの話によると、次の映画で小林くんを主演に持ってくる、っていうんだ」
 藤堂は鴻池から聞いたことを順序だてて話した。
「冗談でしょ。そんな話どこにもありませんよ。それに、工藤がそんなこと許すはずがないじゃないですか!」
 声を抑えてはいるが良太の中で怒りが湧いてくる。
「工藤さんは、小林くんのことを知っているの?」
「知ってるどころか……」
 良太は言葉を切る。
「知ってるどころか?」
「小林さんは工藤の一番大切な人なんですよ」
 そんな言い方しかできなかった。
「良太ちゃん」
 藤堂は驚いて良太を見つめた。
「なるほど。なんだか複雑な事情がありそうだが、鴻池さんは映画というより、彼自身に随分興味がありそうだったよ。ボクの見た限りでは、小林くんの方は、鴻池さんに対してあまりいい印象を持っていないようだった」
 そういえば、と良太は思い出す。
 いつだったか、雪の日、ふらりとオフィスに現れた千雪が、良太に妙なことを聞いた。
『鴻池さんはほな、あれから何も言うてきてないんやな』
 確かそんなことを。
 まさか、あれから、鴻池のターゲットが千雪さんに移ったなんてんじゃないよな?
 胸騒ぎがする。
「わかりました。ちょっと調べてみますから。ありがとうございました」
 良太は早々に藤堂と別れ、オフィスに戻ってきたものの、どうにも落ち着かない。
 もう二度と会いたくはない男だったが、仕方ない、と良太は鴻池の携帯を呼び出した。

 


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