真夏の危険地帯34

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「金曜の夜には出るけど、お前、平気?」
 元気は東に聞いた。
「何時頃?」
「しゃあない、お前に合わせるよ」
「うーん、じゃあ、八時とかでもいいか?」
「わかった」
 考えてみればたかだかアンコールに一曲か二曲やるだけなんだから、何本もギター持ってったって仕方ないか。
 だがなー、気分でどれにするかとか、あるしなー
 結局、元気はギターのことばかりが気になっている。
「ライブって土曜の夜だけだろ? 千葉マーレスタジアムだっけ? お前ら、どっかほかに行くのか?」
「日曜は紀ちゃんの強いご要望でディズニーランドだ」
 はああ、と元気はため息をつく。
 東はそれを見てハハハと笑う。
「いんじゃね? たまには紀ちゃん孝行してやれよ。福利厚生ってやつ?」
「まあな、紀ちゃんにはこっちに戻ってきてから、ずっと世話になってるからな」
「土曜にクリムト行って、あとは銀座あたりをぶらついてみるつもりだが、日曜、帰り、俺浦安まで出ればいいか?」
「銀座あたりにいろよ。ラインしてくれればピックアップするし、豪が」
 豪はどうやら本気で鎌倉の両親に元気を会わせようなどと画策していたらしいが、日曜はディズニーランド、土曜は紀子のご要望で買い物に付き合うことになったからには、まず無理な話だ。
 ったく、冗談じゃない。
 俺はそういう面倒くさいことは嫌いなんだ。
 結婚するわけでもあるまいし、大体どの面下げて大の男が、豪と付き合ってまーすとか挨拶しろって言うんだよ。
 そんなことをつらつら考えているうち、あっという間に金曜になった。
「ホテルはオーニシ? 葛城くん迎えに行かせればいい?」
 浅野からも電話が入った。
「豪が行くからいい」
「あら、豪、くっついてくるんだ」
「だけじゃない、うちの紀ちゃんとダチの東も一緒だ」
「あらら賑やかね、じゃあ、元気御一行様、裏から入れるようにしとくわね」
 電話を切ろうとした浅野に、元気は慌てて呼びかけた。
「おい、こないだみたいな暑苦しい衣装はごめんだからな」
「ああ、今回は大丈夫。ベネチアンマスクだけにしたから。通気性のいいやつ」
 豪は昨夜遅く帰ってきたらしく、ラインにメッセージだけ入っていた。
「あんなんで車出せるのか」
 ぽつりと呟いた元気だったが、午後になると意気揚々と店に現れ、器材を先に車に運んでおくという。
 昼頃まで寝ていたらしい。
「荷物は?」
「バッグ一つで十分だし、まだ用意してない」
 土日を臨時休業することにして、紀子がやたら可愛らしい張り紙を作っていた。
「紀ちゃん、持ってくもの、車に運んでおくけど?」
 豪は紀子にも声をかけた。
「じゃ、後で店に寄ってくれる?」
「OK」
 愛犬リュウの世話を母親の雛子に頼み、その夜元気と遠足気分の三人は一路東京へと向かった。

 


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