「大丈夫だろうって、そんな、適当な!」
「人のことより自分のことを考えろ」
その時工藤の携帯が鳴った。
「ああ、今目が覚めた。脳震盪だろうって話だ」
千雪からで、良太の容態を聞いてきた。
「そらよかった。香坂先生、加賀先生んとこで治療してもろて、部屋まで送り届けたとこです」
それを聞くと、工藤はほっとした。
「悪かったな、いろいろ」
「香坂先生、工藤さんにいろいろ聞くことがあるって息巻いてましたよ」
工藤はフンっと鼻で笑う。
千雪の電話を切った途端、また電話が入った。
波多野からだった。
「ああ、一晩泊まることになった」
今回香坂を拉致るなどというバカなことをしでかしたのは、島本組系列の入間組だという。
表向きは商社の看板を掲げてアジアあたりから怪しげな化粧品や衣類から骨董の類まで輸入しているが、陰では薬や銃器類を骨董品に紛れ込ませて不当にネットで売りさばいたりしているらしい。
三原らがどれだけ待っても入間は来なかったはずで、とっくに波多野の手の者によって捕えられ、後はどうなろうとあなたの知ったことではない、と波多野は工藤に言った。
「ま、今回は、拳銃や大麻などを骨董品に隠して密輸していると暴力団対策課にタレコミしておきましたから、連中はアポ電強盗なんかにも手を出しているらしく警察はよろこんで入間組に乗り込んでいることでしょう」
淡々と波多野は語った。
「ただし、香坂先生やあなたに関わった連中は別ですけど」
最後にそう付け加えて波多野は電話を切った。
「いったい、何だってお前がわざわざ奴らに捕まったりするんだ?」
携帯をポケットに仕舞うなり振り返った工藤の冷ややかな言葉に、良太は一瞬口を噤む。
「香坂先生がバンに拉致されるとこ見たから、タクシーで追いかけた……」
工藤はそれを聞くと大きく息を吐く。
「お前が追いかけなくても、それこそお前なら警察でも何でも通報すればいいだろうが!」
怒鳴られて良太はムッとする。
「警察とかあてにならないってわかってるだろ! だから千雪さん経由で加藤さんの仲間に援護頼んだんです。それから、多分組絡みだと思ったから、モリーから波多野さんに連絡取ってもらって」
確かに、警察に連絡したところで、パトカーがサイレンを鳴らしながら走るだけで、後ろめたい連中は裏に引っ込んでしまい、余計に厄介なことになっただろう。
だがそれでも、床に横たわって動かない良太を目の当たりにするよりはマシだと、工藤は思うのだ。
このヤロウ!
工藤は良太を睨み付ける。
心臓が縮みあがったぞ。
クロエには悪いが良太を連れ帰ることしか頭になかった。
「あんたこそ、大阪じゃなかったのかよ」
良太もムスッとしたままつい悪態をつく。
「奴らに呼び出された。女を預かってるとか、三文ドラマの使い古された科白だ。ったく、無能な奴らだ」
返す返すも腹立たしい。
無駄な時間と労力を使わせやがって。
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