Blue Moon10

back  next  top  Novels


「あのっ、実は野元監督が音楽KIRIYAに頼めっておっしゃって、俺に会いに行けっつんで、今日会いに行ったんですが、俺じゃ話にならないから社長に来いとか言って、取り合ってくれなくて……」
「このバカが! 貴様、何年うちにいる?! 何度でも頭下げてうまく丸め込んで承諾させるのが貴様の仕事だろうが!」
「あ、はい、そうでした……すみません……」
「今は時間がない。また連絡しろ」
 ブチッ!
「相変わらず容赦ないオヤジだぜ、工藤!」
 つい昨日、甘い夜を一緒に過ごした相手とは到底思えない。
 もう、明日になっちまったい、とばかりパソコンの電源を落とし、オフィスの電気を消すと、施錠して自分の部屋へとエレベーターで上がる。
 部屋ではお待ちかねとばかりに、にゃああああん、とナータンが良太を出迎えた。
「よしよし、遅くなってごめんなー」
 ドライフードを皿に入れてナータンの前に置くと、早速カリカリと食べ始める。
「ちぇえ。工藤に言ってもなーんも解決にならねんだからなあ…」
 とりあえず工藤の怒鳴り声で無事到着したことを確認したし、ほっとした良太は、ベッドにちょっと腰を降ろしたつもりがいつの間にか眠り込んでしまった。
 
 
  
 

 
「いっけねっ!」
 ガバッと飛び起きた時は既に夜が明けていた。
 良太の足元で丸くなっていたナータンも驚いてベッドを飛び降りる。
 昨夜はあれこれ考えたりで、相当疲れていたようだ。
「うわあ、九時だよ」
 時計を見てふううと大きく息をつく。
 工藤がいない間に、あれやこれやと仕事が詰まっている。
 その上…………。
「くっそー、しゃあない、またあのいけ好かないヤロウに電話してみるか」
 自分がしでかしたこととはいえ、霧弥のことを考えるとむちゃくちゃ気が重い。
 ざっとシャワーを浴びて仕切りなおし、明るめのシャツとスーツに着替えると両手で頬をはたいて、どこぞの力士にも負けない気合いを入れる。
 オフィスでコーヒーをセットして、パソコンの電源を入れたところへ、鈴木さんのご出勤だ。
「あら、おはようございます、良太ちゃん、今日は早いのね」
「おはようございますぅ。まあ、工藤さんいないし、ちょっと気合い入れようかと」
 へへへと笑って良太は自分と鈴木さんにコーヒーを二つキッチンから運んでくる。
「ありがとう。でも、あんまり無茶しないのよ?」
「わっかりましたぁ!」
 返事は空元気だ。
 まあ、これ以上工藤に雷を落とされないようにっと。
「おい、良太いるかっ!」
 もう少ししたら霧弥に電話を入れてみようと思っていた良太は、バタバタと駆け込んできた小笠原を見て驚いた。
「どうしたんだよ、んな慌てて」
「お前、知ってるのかよ、例の特番のこと」
「特番? お前ここんとこ特番の予定ないぞ。今朝方までロケだったんだろ? お疲れ様、コーヒー飲む?」
「ああ、さっき上がってメシ食ったとこだけどよ」
 良太がコーヒーを用意していると、のっそりと小笠原の背後から憔悴しきった顔で真中が現れた。
「お疲れっす」
「お疲れ様。二人とも帰って休めよもう」
「だから、それどこじゃないんだって。CBSが『明日はドッチだ?!』の特番、今撮ってるMBC創立記念だっけかのドラマの裏にぶつけてきたんだよ」
「ウッソだろ……」
 二人にコーヒーを渡そうとした良太は、工藤の居ぬ間にまたぞろ降ってきた難題に二の句がつげない。

 


back  next  top  Novels