「まだ、紫紀さんから宮下さんに打診したって段階の話だが、今年の東洋グループのCMプロジェクトの高評価から、おそらく、本決まりになるのはそう遠くない。佐藤企画や川西プロダクション、それに大森美術に声かけて来年の春から夏までのどこかでニューヨーク行き、話を通しておけ。プロジェクトが始動したら、お前がチームリーダーだからな。研修は三か月だが、プロジェクト関連でニューヨークと行ったり来たりになるから覚悟しとけ」
一気に言い放った工藤の話の内容は、良太もわかってはいたが、同時に頭のどこかでこうしてああしてと段取りをする自分がいるものの、はっきり把握できたのは数分後のことだった。
川西プロダクションとか佐藤企画って、『大いなる旅人』の制作陣だよな。
春から夏って大丈夫なのか。
「俺、ですか?」
ようやく口にした良太に、「何を呆けている。ビッグプロジェクトだ、失敗なんて言葉はどこを探してもない」と工藤はさらに畳みかける。
「でも、まだ、案件が確定したわけじゃないんですよね?」
「確定してから動くバカがどこにいる。こうして打診された時点で動き始めても早いとは限らない。アスカの件はまだもう一人の候補と見当中らしいが、一応、秋山にもスケジュールを仮押さえするようには伝えてある」
工藤は腕組みをして仁王立ちのように立ったまま続けた。
「イメージキャラクターは沢村と仮にアスカ、チームはプラグイン、佐々木オフィス、大いなるの制作チーム、それに現地のプロダクションが合流する。まとめるのはお前だ」
「でも俺、沢村の代理人でもあるんですよ?」
「代理人はお前でいいだろう。何かあればうちが動けばいい」
「はあ」
沢村の代理人、というのも良太が窓口になっています、というだけのようなものだから、さほど心配はしていない。
だが、ネットプライムの研修でさえ良太にとっては降って湧いたような話だったのに、そんな大きなプロジェクトのリーダーと言われても未だ実感がわかない。
いずれにせよ、工藤の言うようにほぼ確定なのであれば、今から下準備に動く必要がある。
「ってか、まずそれ沢村に聞いてみないと、ってか、そうすると佐々木さんのニューヨーク行きもやっぱ話さないとだめだよな」
一気にいろいろが絡みついて、どう動くかを考えるのも面倒なことになって、良太はうーんと唸る。
「お前が動かすんだろうが。沢村も佐々木さんも」
工藤の一言が良太の中ですとんと納まった。
「俺が、ですか?」
すると工藤が笑う。
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