月澄む空に157

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「そういえば、ヨーロッパから帰ったら、また先輩にインタビューするて、りさ子さん、言うてたけど」
「ああ、やっぱそうか。まあ、彼女はいろいろ詮索せえへんし、きっちり仕事の話だけやから、まあ、ええか」
 今までにも雑誌社の編集をしている佐久間の彼女、りさ子には数回インタビューを受けているが、千雪のいで立ちをどうこう言うこともなく、作品や制作のことをしっかり調べた上で、きっちり記事を書いてくれたことで、工藤も雑誌のインタビューなら彼女にと信頼を置いているようだ。
 新聞や雑誌などの購買数が右肩下がりの昨今、微増ながら売り上げを挙げたことで社内でも社長賞をもらうなど、ただ美人なだけではない知的さのあるりさ子は、佐久間よりも五歳は上らしいが、別れ話も何度かあったにもかかわらず、二人は十年ほどの付き合いになる。
「まあ、せいぜい彼女に捨てられんように頑張り」
 捨て台詞のように言い置いて、千雪はキャンパスを後にした。
「え、どこ行かはるん?」
「やぼようや」
 東京に来て数年は、大学から歩いて五分ほどのところにアパートを借りていたので、一旦部屋に戻って着替えてから出かけたりもできたのだが、今のマンションまでは電車で三十数分かかるため、そういう点では不便だ。
 時間がある時は部屋に帰ることもできるが、面倒な時はロッカーに常備しているスニーカーやジャケットを駅のトイレなどで着替える。
 それも面倒な時は、眼鏡をはずして軽く髪をかき上げるだけでも別人級に人は見てくれる。
 要は視線が顔に向けられるからだ。
 こういった七変化的な変装を千雪が教わったのは、京助や佐久間が所属していた空手部のマネージャーで木村という女子学生だった。
 直接教えてもらったわけではないが、木村は見事に別の自分を仕立て上げ、千雪も留学から戻るまで、見抜くことはできなかった。
当時探偵小説を書いていて、千雪に一方的に原稿を送りつけていたのだが、その変装ぶりは、小説よりも名探偵だと千雪は思ったものだ。
その彼女のマネではないが、千雪のように極端なコスプレでなくとも小道具を少し変えるだけでも随分印象が変わる。
 千雪は歩きながら携帯を取り出した。
「あ、良太? 俺や。今日も撮影? どこ?」
 意外な電話をもらったのは良太だ。
 しかも珍しくちょっと話があるから千雪は立ち寄るという。

 


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