Moon Light19

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 一方、鴻池が執拗に良太にドラマ出演を促したというところに何か引っかかりを覚えた千雪は、鴻池のことをいろいろと調べていた。
 そして妙な情報も入手した。
「言い忘れたんだが、鴻池はバイで特にきれいな少年が好きだから、千雪くん、気をつけろよ」
 京助から鴻池の情報を聞かれた京助の兄、綾小路紫紀は笑いながら、わざわざパリから電話をかけてよこしてそんな忠告をした。
 
  

 
 
 秋晴れの日曜、日本商工会に名を連ねる大企業の婦人部主催による秋のボランティア茶会が護国寺で行われていた。
 その茶会の主催者側の先頭に立っているのが、東洋グループ次期CEOと目され、現在は東洋商事取締役兼パリ支社長である綾小路紫紀の妻、小夜子だった。
 小夜子は千雪の母方の従姉になり、日本橋大和屋の役員でもある。
 ちょうど商工会議所会頭を始め、財界の大物を招いての茶会に鴻池和路も出席するらしいと京助から聞いた千雪は、その茶会に二人で紛れ込んだ。
 この際、もし自分に興味を持たせることができれば、と千雪は、紫紀からの忠告を逆手にとって目論んでいた。
 小夜子に頼んでうまく鴻池に接触し、母方の従弟と紹介してもらった千雪は、何とか鴻池に取り入ることができた。
 自分のコンプレックスの元凶であるその顔を武器にするなどとは、千雪にとって全くもって不愉快極まりなかったが、過去のイヤな経験上、有効な手段だろうとはよくわかっている。
 なにより良太のためだ。
「あのおっさんに気に入られる自信があるわけやね」などと皮肉る京助に、「気に入ってもらわんと、あとが続けへんの。やりとないんやったら、けえへんかてええ」と返す。
「くっそ!」と舌打ちしながら、京助としては鴻池を見張ることに不承不承従わざるを得ない。
 案外、鴻池は一人で行動する男だった。
「お茶会でお会いしましたね、こんな所でまたお目にかかれるなんて」
 茶会のあとタクシーに乗った鴻池を尾行し、バーに一人で入ったところへ、千雪が偶然を装い声をかける。
 無論鴻池はもちろん、ダサい風貌で知られる推理作家の小林千雪とはまるで気づいていない。
 酔った振りをして、鴻池にいかにも気があるかのように微笑むと、鴻池の怜悧な眼差しは見る見る色めき、千雪はまんまとホテルに連れ込むのに成功した。
 このおっさん、いとも簡単によう知らん人間とホテル行くなあ。
 社会的地位とかそう考えへんのんか、いざとなったら金に物を言わせれば済むと思うてるのか……
 ま、少年、いうトシやないけどな…
 千雪は一人突っ込みを入れる。
 かなり際どい方法だったが、鴻池がシャワーを浴びているすきに、千雪は鴻池のポケットから携帯を取り出し、画面ロックを解除した。
 案外面倒くさがりなのかログインはデフォルトの設定で、思いの外簡単に中に入ることができた。

 


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