寒っ!
肩にひんやりとした風を感じて、良太は目を覚ました。
「あれ…」
ベッドの中だ。
そういえば確か工藤が酔っ払って帰ってきて、じゅうたんの上に倒れ込んで……
俺も寝ちゃったのか。
「……ああ、そうしてくれ。相田、カミさん一人で大丈夫か? 小田が今朝行くって言ってたが」
腰にバスタオル一枚巻きつけた工藤が携帯で話している。
タバコは噛んでいるだけで、火はついていない。
なーんか、オヤジだーーー!
うへ…五時半……もちょっと寝てろよ、工藤………
枕元の時計をちらりと見て、良太はまた眼を閉じる。
ん……相田って?
「相田企画? やっぱ何かあったのか?」
がばとベッドに起き上がり、良太は携帯を切った工藤に切り出した。
「ああ、倒産だ」
工藤が振り返った。
「まさか、相田さん……」
良太は表情を硬くする。
「ばーか、カミさんが代表になってるんで、後始末はまかせて、スタッフに仕事振り分ける算段をしていたんだ、ヤギと」
「なんだ、そうか、俺……」
工藤のようすからまた最悪の結果を思い描いていた良太は、胸を撫で下ろした。
「それでどうにかなったんですか?」
「ちょうどナイロビ行きスタッフにキャンセルがあったんで、急遽相田をヤギらと同行させることにした」
そう言いながら工藤は良太の横に入ってくる。
「うわ! 何だよっ!」
次には抱き込まれて、良太は喚く。
「睡眠不足なんだろ?! 寝ろよ! たまにはちゃんと」
「ああ、お陰で夕べはぐっすり寝た」
にやっと笑う工藤にはすっかりいつものタフさが戻っている。
って、裸じゃん、俺……まず……
「やっぱやることはやらないとな」
かあっと良太の頭に血が逆流する。
「単なる生理現象だろっ! ちょ、触るな! 俺今日、あちこち飛び回らなけりゃ……」
しかしキスは朝とは到底思えない濃厚なヤツで。
工藤にはてんで歯が立たないとはわかっていても、少しは抵抗しないではいられない。
だって、そんなの…くやし…
だがとっくにそんな良太の心の内など工藤はお見通しで、軽くあしらって力を奪う。
大きく息をつくと、もう工藤の意のまま高みへと連れて行かれる。
工藤は細い身体を揺さぶりながら、途方もなく甘い旋律に良太が身体を震わせるのを愉しむ。
吐息とも悲鳴ともつかぬ声をあげて自分にしがみついてくる時の良太は、どんな女にもない妙に色を含んだ艶やかさを見せるのだ。
それが工藤にとってはたまらなく可愛い。
「良太…」
途端、工藤の背中の指がきつく力を増す。
「…あ…工藤…」
良太は夢中で工藤にしがみついた。
草原が広がっていた。
群れをなして走り続ける生き物たち。
遠くで象が大きく鳴いた。
「アフリカだー!! わお! すんげーー!」
子供のように良太ははしゃぐ。
大きなライオンがゆっくりと近づいてくる。
「うわ……」
足が竦んで動けない良太の前に、たてがみを風になびかせながらライオンが座った。
「え…何?」
ひどく澄んだきれいな目をしている。
不思議だ、怖くないじゃん。
「お手」
手のひらを上にライオンの前に差し出すと、ライオンはボンと大きな手を載せた。
「わー、工藤さん、ライオンてお手するんだ」
今度は別のライオンが良太の肩に手を載せて揺さぶった。
「わ、何だよ、こら……」
良太は言いながら笑った。
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