「どうした? 彼女と何かあった?」
どう対処していいかわからない内海の言動に小首を傾げる良太のところにジミーがやってきた。
「ああ、いや、よくわからないんだけど、どうも俺、彼女に毛嫌いされてるみたいで」
良太がそう言って首を傾げると、ジミーは、ああ、と訳知り顔で笑みを浮かべた。
「入社二年目でやっとこの研修プロジェクトに参加できたんだ。それが、ボブが、東京からの精鋭を参加させると言い出した」
良太は目を丸くする。
ボブとはこのプロジェクトのボスで、東京で良太も顔を合わせたことはあった。
「その、精鋭ってまさか、俺?」
「そうそう。東京でいくつかの番組をプロデュースしているエリートが参加するって。それを聞いてこのプロジェクトに意欲を燃やしてた彼女は面白くなかったみたいだよ。いや、ほんというと、俺もさ、ちょっとはどんなやつがくるかって思ってた」
「はあ?」
思わず仰け反りそうになるような話に、良太はしばし二の句が継げない。
「それ、めちゃくちゃ盛った話だから。俺、社長の仕事をアシストするくらいでエリートでも何でもないし」
「でも、ほら、こっちでも番組の撮影してるし、東洋商事のCMのプロジェクトリーダーなんだろ?」
ドキュメンタリー番組の撮影があるくらいはジミーにも話したが、東洋商事の件については口にしたこともなかったので、良太は少し驚いた。
「それもボブから聞いた?」
「まあ、詳細はわからないけど、そういう話は業界関係者からいつの間にか入ってくるものだよ。CMに起用されているのもビッグな人材だってさ」
ジミーは肩を竦めた。
「うん、この件についてはあまり詳しくは言えないけど、たまたまその起用されている人材に代理人にされて、以前もCM制作に加わった経緯があって、それでクライアントがじゃあお前がリーダーやれ、みたいな流れで」
良太はこんな言い訳染みた話をするつもりはなかったのに、やれやれと息をつく。
「何にせよ、チャンスはものにしないと。だろ?」
ジミーが言った。
「それはもちろん!」
良太は大きく頷いた。
早朝からの緊張しっぱなしだったカーチェイスロケが終了し、良太がとジミーがランチに行こうかなどと話している頃、そろそろ真夜中にさしかかった東京は世田谷のスタジオでは時ならぬ雷が発生していた。
いや、まだ本物の雷の方がマシだという話もある。
「ベテランのくせに何をきょどってる! 家元の妻ってオーラが微塵もないぞ」
業界で鬼と噂された男に雷を落とされているのは、今や大御所ともいわれる域に入ろうかという人気俳優白河優菜だ。
茶室に案内された検事六条渉と相棒のように行動を共にする刑事四ノ宮の前で、点前を披露するというシーンだが、今一つ仕草に固さがあり、これで二回目の取り直しとなった。
「ちょっと高広! 即席で茶道なんかやらされてここまでやれるなんて、ベテランならでこそなのよ。そんなガミガミ言ってよくなるわけないじゃない」
と、ここで工藤にくってかかったのは、六条役の山内ひとみだ。
「なんだか知らないけど、イライラをこっちにぶつけないでよね!」
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