頑張り過ぎるなとは言ったが、良太は研修であれ撮影であれプロジェクトであれ全力で向かうだろうことはわかっている。
それは良太のこれからにとっても決して無駄になるものではないし、むしろ血肉になるに違いない。
だったら、いくらでも研修してこい、と言えればいいのだが、クソ、終わったらとっとと帰ってこさせるぞ、とまた工藤は、ニューヨークからの機内でも呟いたようなことを心の中で繰り返していた。
その日、良太はレッドイーグルスの本拠地、Fパークにいた。
前回は沢村の自宅からのインタビューをパワスポの中で、良太PのMLBレポートと称して発信したのだが、初めての中継でどうしても固くなった。
「肩に力入り過ぎじゃない」
とはアスカからの電話。
「淡々とインタビューだけでつまんない」
とは亜弓からのメッセージ。
「もっといつもみたいに普通に話せば?」
とは、今は飯島肇の妻となったかおりまでが文句をつけてきた。
工藤からも前々から肩の力を抜けとは言われているが、良太としては、一回目としてはあれが精一杯というところなのだ。
まあ、殿村チーフらは、良太が初めて一人でやる中継としてはその程度は織り込み済みで、今回、西海岸の大川投手の取材を終えた市川アナが良太の助っ人として来てくれていた。
「はい、今日は特別にFパークではおなじみの巨大フェンス、Gモンスターの内部に入らせていただいてます」
明るい市川アナウンサーの声が薄暗いGモンスターの中に響いた。
「ありとあらゆるところにこの球場で活躍した歴代の選手のサインがあります。わ、これ、かの大投手エイドリアン・ダグラス選手です!」
そして良太のように自撮りではなく、ちゃんとカメラマンも同行している。
「ここでは球場が始まって以来ずっと、人の手によってスコアが表示されているんですよ!」
市川アナ登場ということで放映時間も少し長めにとってあった。
「歴代の名選手のサインを見て何か思うところはありますか?」
良太が沢村に尋ねる。
ここで沢村は、「あらためてMLBでプレーしているという実感が湧いた」というような発言をする予定だったのだが。
「どこの球場でも同じように、真面目にプレーするだけです」
にこりともせずに沢村が言う。
第一回のレポートも、良太が固くなっていただけでなく沢村もそんな感じのインタビューだったので、余計に面白くないもの、になっていたのだ。
「うーん、せっかくMLBにきているんですから、沢村選手も良太Pも、いつものような頓着ないやり取りでお願いします」
ここで市川アナがそんなことを言い出した。
「実はお二人、キッズチームの頃からのライバル同士で仲がいいんですよ。六大学野球でも対戦されているんですよね」
さらにこれには良太も沢村も互いに顔を見合わせた。
「いや、別に仲がいいというほどでは」
良太が言えば、「ライバルとか言ってるのは良太Pだけ」と沢村が返す。
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