空はやっぱ青い31

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「何ですか?」
「いや、あの時のことを思い出してね。工藤さんがあんな言い方したのは多分……」
「多分?」
 佐々木は胡乱な目を藤堂に向けた。
「や、まあ、今、こんな話をしたのは、どうやらプロジェクトは既に決まりらしいし、行く末を左右するのは、どうやったらうまく良太ちゃんを引っ張り込めるかによるんじゃないかってね。佐々木さんの腕の見せ所?」
 言いかけて話をそらした藤堂に、「今、何を言いたかったんです?」と佐々木は突っ込みを入れる。
「まあまあ」
 藤堂は笑う。
「俺にだけ責任押し付けんといてくださいよ」
 煙に巻いた藤堂にそんなことを言いながら、佐々木はリビングの中央へと向かう。
「もちろん、できる限りの手は尽くしますよ」
 あれは多分、工藤さんの独占欲?
 藤堂は心の中でそう断言していた。
 仕事以外で工藤の考えていることなど、近しい人間ならまだしもおそらく誰も知ろうとも思わないし、知ろうとしたところであの渋面に邪魔されて誰にもわからないだろう。
 いや、長くあの男と付き合ってきた者でさえ、なかなかその心中を察する者は少ないに違いない。
 工藤の盟友、ディレクターの下柳や顧問弁護士の小田、それに今や悪友ともいえる山内ひとみくらいだろう、工藤が気を許していると思われる人間は。
 周囲は暗黙の了解のようなことになっているが、無理難題を部下に押し付ける業界では鬼と言われた社長工藤に対して怯むことなく不平不満をぶちながら東奔西走する良太との関係が社長と部下を超えたものだなどと誰が考えるか。
 だが、そうと思って見ている藤堂には、工藤に必死でくらいついている良太が工藤を慕っていることだけでなく、そんなことを一切口にすることはなくても良太をどれだけ大切にしているかくらいわかっている。
 いつぞや、ロケ現場で倒れた良太に何ごとにも動じないはずの工藤が咄嗟に駆け寄った、あれが素の工藤だ。
 全くあの二人は互いに負けず嫌いで頑固もの同士、破れ鍋に綴蓋なんだよな。
 藤堂はしばらくニューヨークの夜景に目を向けながらそんなことを考えていた。
 まあ、デバガメも大概にしとかないととは思うけど、良太ちゃんが頑なにCM出演を拒否るのは、やっぱ工藤さんに対する屈折した思いが原因だよな。
「藤堂さん、いただいたワイン開けるよ」
「お、それ絶対いけると思うよ」
 直子に呼ばれて藤堂はリビングへと戻ると、佐々木をしばしでも独り占めしていた藤堂を沢村が剣呑な目で睨みつけた。
「何話してたんだよ」
「だから仕事のことだって。いろいろ守秘義務があるからね」
 適当な理由を口にする藤堂を、沢村はフンっとばかりにまたひと睨みした。

 


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