空はやっぱ青い36

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 どうやら紫紀のプランが既定路線らしいと藤堂からも言われて、念のためにと送られてきた、良太のいう黒歴史当時のCM動画やドラマなどを、佐々木もじっくり見たのだが、CMもにわか仕立てとは思えない完成度で、良太がなぜこれを黒歴史と言うのかも佐々木にはわからないところだった。
 ドラマは確かに最初はおぼつかないようすも見て取れたものの、後の方で出てくるアスカとのやり取りのシーンなどは、良太はしっかり役をこなしている。
 これを見て、大御所の脚本家やプロデューサーらが目をつけてこの時の役名をそのまま芸名として使っていた『和泉秀也』なる俳優を探したというが、それもあり得ないことはないと佐々木は思う。
 初っ端でこれだけの存在感、しかも清涼感ありで甘めのルックスだ、俳優として売り出したところで何の不思議はない。
 藤堂に聞いたところによると撮影時、何度もリテイクで周りからブーイングだったというのだが、そんなことは初心者なら当たり前と言えば当たり前だ。
 ただ、何やらスポンサーの鴻池物産と青山プロとの間に何やらあったらしい、とは藤堂も言っていたが、今回は全くスポンサーも違うわけで、良太が出演を渋る要因ではないだろう。
「佐々木ちゃん、ってば!」
 直子の声に考え込んでいた佐々木は、はっと顔を上げた。
「あ、ああ、悪い、埋没しよった。藤堂さんから当時のCMやドラマ送ってもろたんやけどな、直ちゃんの言うように、あのまま俳優路線でも良太ちゃん、行けてるやろ、思てな」
「そうなのよ。それをあえて黒歴史っていうのは、良太ちゃんのこだわりだと思う」
「まあな、東洋商事のプロジェクトリーダーかて、紫紀さんにしても宮下さんにしても、良太ちゃんの実力を踏まえてのことやし、今、プロデューサーとしても伸びてる最中やからな。そこへ降って湧いたような、良太ちゃん自身の出演の話や、戸惑うんも無理はないけど」
 すると直子は少し逡巡したように口を開いた。
「あのねえ、私が思うに、やっぱ、仕事のことじゃないと思うのよ、良太ちゃんの場合」
 佐々木はどこかで聞いたような発言だと、直子を見つめた。
「それなあ、なんや藤堂さんも似たようなこと言うたはったんやけど、やっぱ工藤さんと良太ちゃんの間の複雑な何か、いうこと?」
 直子はフフフと笑う。
「まあ、そうねえ、多分、良太ちゃんが俳優路線とか言うと、工藤さんが嫌がるって思ってるから、あえて黒歴史とかって葬り去りたいくらいに思ってるんじゃないかな」
「ああ、商品価値がないて、工藤さんに言われたて、あれ? 思い切り傷つくわな、認めてもらいたい相手にそんなん言われたら」
 佐々木は良太の心情を思いやってため息をついた。
「うーん、そうなんだけどさ、工藤さん、本気で言ったんじゃないんじゃないかなって」
「え?」
 小首を傾げて佐々木は直子を見た。
「まあ、売り言葉に買い言葉で言い過ぎたんやないかとは思うけど」
「うーん、それもあるけど、だってさ、藤堂さんが目を付けたくらいよ? 鬼の工藤と言われた敏腕プロデューサーが、良太ちゃんにそういう資質を見抜けないと思う?」
「確かに。でも身内やからオブラートがかかってわかれへんかった、とか?」
 佐々木に問われた直子は首を横に振った。

 


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