空はやっぱ青い40

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「お前の顔を見たら苦くもなるさ」
 吐き捨てる工藤を下柳と挟むようにひとみが陣取った。
「ヤギちゃん、私にも」
 焼酎のボトルを傾けている下柳に、ひとみが持参したグラスを差し出した。
「まさか、パワスポの大反響レポート見て、良太ちゃんに、お前がしゃしゃり出るなとか言ってるんじゃないでしょうね」
 下柳が氷を入れてコクコクと焼酎を注いでいる傍で、ひとみが言った。
「なんだそれは」
 ますます工藤の眉間の皺が深くなる。
「あれ、好評なのに、良太ちゃんを表舞台に出さずにしまっておきたいって、高広のオモワクで、飛躍しようとしてる良太ちゃんの足を引っ張ったりとか」
 東洋商事のCMの話はさすがにまだ非公表だからひとみが知るわけがないのだが、ネチっとした嫌味を平気でぶつけてくる。
「くだらん、何がオモワクだ」
 工藤は苛ついてグイっとお猪口の酒を空けた。
「何をやろうがプロデューサーは良太だ。あいつがやりたいようにやればいい」
「ああら、高広にしてはひろーい了見だこと。いいのよ、それで。雛鳥は羽ばたかせてやれば」
 ゴクゴクとグラスを空けて、「あ、美味しい、これ」とひとみは満足げに笑みを浮かべる。
 すると左隣の下柳までが、うんうん、と頷いた。
「良太ちゃんの飛躍の年だあな。お前も子離れしてみるのがいいさ」
「俺がいつ、あいつの足を引っ張った?」
 低い唸りのように工藤が口にする。
「大丈夫よ、高広、飛んでっちゃった雛鳥は、そのうちおっきくなって、刷り込みした親のところに戻ってくるから」
 バンバンとまた今度は工藤の背中を叩く。
「おい、ヤギ、こいつに飲ませるのやもうやめろ」
 ウワバミと称されるひとみだが、どうやらかなり飲んでいるらしい。
 天野と話し込んでいたひとみのマネージャー須永が、三人の方へ顔を向けた。
「あーあ、ひとみさん、また飲み過ぎ」
 須永はひとみのようすを見て、情けない顔をする。
「長年の付き合いでも、ひとみさんの酒だけは、コントロール難しそうですね」
 天野が笑う。
「いや、ほんと。まだ、帰れって言われないだけましかも」
「なるほど、帰れってことはオール? みたいな」
 クスクス笑う天野に、「笑いごとじゃないですよ。まあそれでも昔のように、二日酔いで仕事に差し障りそうで、水をがぶ飲みさせるなんてことはなくなりましたけどね」と須永が苦労話を吐露する。
「うん、でもあの三人、いい感じですよね。ずっと仕事をやってきた同志みたいな感じじゃないですか」
 天野はちょっと羨まし気に言った。
「はあ、まあ、そうなんですけどね」
「ちょっと足元おぼつかなくなったら、俺も加勢しますから」
 須永はそんな天野を有難げに見つめた。
「ここんとこ、天野さんに頼りっぱなしで、ほんと申し訳ない」
「いやいや、俺もひとみさんから、芝居のことやら何やら、いろいろご教授いただいてますからね」
 仕事で付き合うようになったひとみは、今の天野にとって俳優としての大先輩であり、気風のいい姉後肌のひとみとはうまがあったというところだろう。
 むしろそんなひとみとの関係を天野は楽しくも思っていた。

 


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