幻月46

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『あんたのとこにも変な脅しがきたんだ? もうちょっとヤバイんじゃない? 今夜なんかヒロと木戸がまたうちの女の子連れて、奥多摩行ったのよ。もうあいつら、何しでかすかわかんないし! あたしはあんたたちのトバッチリを食うのなんかごめんだから! 何言ってんのよ! 田口! ママ殺したの、あんたじゃない!』
清水美咲と電話で話しているのは田口紀佳のようだ。
「ゲロったで? 店の女」
 辻がにやりと笑う。
「まあ、盗聴の上やからな。けど、この清水美咲、つつけば一番先にゲロするわな」
 あくまでも千雪は慎重に言った。
 その時、静かに近づいてくる車があった。
「あっ、谷川さん、もう、着いたんですか? 今そっちに行きます」
 携帯に電話が入り、後ろの車にいるのが谷川だとわかった。
 良太は車を降りて谷川の車に乗り込んだ。
「すみません、実は電話では話していないんですが……」
 直子が男たちに連れてこられて、建物の中にいることや、今、啓たちが裏山に入っていった木戸らを追っていること、もしかすると以前行方不明になった女の子にも木戸らが何かした可能性があることなどを良太はかいつまんで話した。
「何だって? 直子さんが? まったくみんな無茶ばっかしおって」
 谷川が建物を探ってみるというので、良太は辻から啓の仲間に連絡をいれてもらった。
「元刑事さんいう人か?」
「そうです」
「ほんまもんのデカさんやったら拉致監禁で現行犯逮捕やで」
「まあ、そうですよね」
 辻の言葉に良太はふうと大きく息をつく。
「それでも、やつらを捕まえて見張っておいて、警察に連絡を入れるしかないです」
 すると啓から裏山に上っていった木戸が何かをシャベルで掘り返しているという連絡が入り、皆にしばし緊張が走る。
「何かを取り出したらしいて。行くで」
 辻の言葉が合図になって皆が車を降りた。
 良太も京助に続いて行こうとすると千雪がそれを止めた。
「お前はここで司令塔やっとけ」
「何で!?」
 良太は千雪に怪訝な顔を向けた。
「腕っぷしに自信あるやつに任せとけばええ。建物の方も気になるしな」
 そうだった。
 直ちゃん!
「藤堂さんもこっち来はるんやろ?」
 不承不承、良太はナビシートに留まった。
 谷川は灯りの洩れている部屋の外へと回り、啓の仲間の一人将太と合流した。
「女の子と男、二人だけだ」
 将太が言った。
「女の子を男から離して、男を確保しよう。ちょっと待ってくれ」
 谷川は良太の携帯を呼び出した。
「直子さんを見つけた。彼女と連絡を取る術はないか? 男を何かで逆側からおびき寄せて彼女から引き離して、そのすきに窓側から彼女を奪還する。リビングは掃き出し窓、ってか床まである窓だから」
「うーん、携帯鳴らしてみます。マナーモードにしてると思うけど、バイブになってたら」
「じゃ、五分後に鳴らしてみてくれ」
 谷川は良太にそういうと、今度は将太に向き直る。
「君は今から向こう側に回って何か物音をさせて男をひきつけてくれ」
「わかった」
 将太は頷いて部屋の音を立てずに消えた。
 谷川は注意深く中の様子を見守った。
 出水が銃のような武器を所持していたらまずいだろう。


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