恋ってウソだろ?!31

back  next  top  Novels


 見上げるとトモがバスタブの佐々木を覗き込んでいる。
「さっきお疲れのようだったし、やっぱり寝てた」
「う……悪い。あんまり居心地いいんでつい……すぐあがる」
 バシャバシャと身体を起こした佐々木に、トモはクスクス笑う。
「急がなくていいから。でも風呂で寝ると溺れますよ」
 寝ちまってたんか、俺! ってより恥ずかしいで! いくら男同士いうたって、やることやってるし、こういうんは……
 トモがバスルームを出て行くと、佐々木は慌ててバスタブから上がり、置いてあった上等のバスローブを羽織る。
 鏡に写る自分は何とも情けない顔をしていた。
「はあ……ええ年をした男が……なんやね……このザマ」
 佐々木が部屋に戻ると、携帯で話していたトモが振り返り、英語で二言三言話してから電話を切った。
「仕事?」
 英語も自在に扱うトモには海外とも取引があるのだろう。
「そう。俺のこと少しは気にしてくれる?」
「まあ、そうやな」
「ガッカリするかもよ? 俺のことわかったら」
「なんで?」
「いや、何となく。でも、そのうち、わかっちまうかも………」
 トモは口ごもり、そして苦笑した。
 佐々木はトモが、本当の自分を知られたくないんやろか、と思う。
「あ、すまんな、長湯してしもて…」
 何となくぎこちなくなった空気をごまかすように、佐々木は言った。
「疲れを取ってもらうのが一番大事だからそれはいいけど、酔って寝ちゃダメですよ。あ、これ、結構いけますよ、よかったらどうぞ」
 テーブルにはコニャックとグラスが用意されていた。
「何や……」
 ほんまにいたれりつくせりや。
 フロアスタンドとフットライトだけの明りが柔らかい。
 ソファに腰を降ろしてコニャックをなめながら、窓越しに見えるのはやはり漆黒の空で、まるで異世界に迷い込んでしまったかのように思えてくる。
 何で俺ら、ここにいて、何をやっているんや?
 頭の隅に見え隠れするそんな疑問にはこの際耳を塞いで、とにかくこの空間、静寂が心地よい。
 やがてバスルームから出てきたトモは、佐々木のグラスからちょっとコニャックを口にしただけで、そのまま佐々木の喉元に食らいついた。
 さっきまでの紳士面からいきなり性急な勢いで抱き込まれて、佐々木は少しばかり躊躇したもののトモのキスは甘く、それに翻弄されているうちにバスローブもどこかに行ってしまっていた。
 トモの指が佐々木の身体を這い、熱い唇が佐々木の身体をゆっくりと昂ぶらせる。
 こんな風に自分の身体が誰かに操られるなんて、ついこないだまでの佐々木には思いもよらないことだ。
 フライパンの上のバターのようにどろどろに溶かされた佐々木は、押し入ってくるトモに息をのんだのもつかの間、揺さぶられて喘ぎ、与えられる刺激に上ずった声を上げた。
 意識を飛ばして、朝になるまでぐっすりと眠り込んでしまったらしく、佐々木はトモの厚い胸に抱かれたままベッドの中にいた。
 身じろぎするとトモが佐々木を抱いている腕を引いて、優しくその指で佐々木の髪から首筋へと触れた。
「まだ、早いよ」
 トモは佐々木の額から鼻へ、頬から唇へとキスを落とす。
 重なり合った肌から互いの体温を感じている、そんな状況に、佐々木はひどく恥ずかしくなった。
 まるで女の視点や……
 問題なのはそれが異様に心地よ過ぎることだ。
 参ったな………
 

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます