恋ってウソだろ?!32

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「顔が赤いですよ、佐々木さん」
 浩輔の声に、夢想から呼び戻された佐々木は、ミルクティを一口飲んで、「生き返るな~」などと笑ってごまかした。
 ったく、打ち合わせの最中というのにこれやから……
「今日はもういいですから、帰って休んで下さい」
 浩輔は心配顔で、そう言い渡す。
「平気や。ナオちゃんに薬もろて、飲んできてるし」
「家まで車で送りますから」
「ちょい待ち、ほら、今週、上のギャラリーで個展やってるやろ? 去年も個展やってた五十嵐悠って新進画家の。あの時はちょうど忙しくてオープニング行けなくて、ちょっと覗いただけやったから、今日はゆっくり見せてもらお、思て」
「おや、さすがは佐々木さん、見る目が違うね。うちのトウヘンボクとは大違いだ。どうぞどうぞ、今日は本人も来てるはずだし」
「へえ、ちょうどよかった。実は東京美術大学の飯倉先生、俺の大学の恩師とは同期で、何度かお会いしたことあるんですよ。教え子の五十嵐さんの噂も聞いてたんです」
 佐々木の話に、藤堂はいたずらっぽく笑う。
「それはぜひ、本人とも会ってやってください」
「何でも、飯倉先生、本人には滅茶苦茶嫌われてるらしうて、会えばお互い喧々囂々やったとかって。あの先生も子供みたいなとこあるし、気まぐれやし、学生もやりにくいやろね」
 佐々木は面倒くさい熟年画家たちのことを思い出しながら笑みを浮かべる。
「よくわかってるね、佐々木さん。とりあえずゆっくりお茶をどうぞ。いつでもご案内しますよ」
「誰がトウヘンボクだ?」
 三浦を従えた河崎がちょうど出かける前に、藤堂の横を通りしな、プランをチラリと覗き込んだ。
「身に覚えがなければ文句は言わないだろうが」
「プラン一だ。それで進めろ」
 命令口調で言い渡して河崎はドアに向かう。
「行ってらっしゃい」
 浩輔の声に送られて二人が出て行くと、藤堂が「うるさいのがいなくなったし、佐々木さん、羽のばしちゃっていいから」と、茶目っ気たっぷりにウインクしてキッチンに向かう。
「しかし、河崎さん、スパッと決めはって、ちょっと見ただけやのになぁ」
 プラン一は佐々木としても押したかったし、藤堂や浩輔の意見も一致している。
「なぁに、あいつのははったりだからね。だまされちゃいけない」
 トレーにプリンを載せて戻ってきた藤堂が首を振る。
「まあ、クリエイターとしても一押しのプランならやはり一番に持ってくるだろう? それに佐々木さんならどれを取ったって失敗することはないとふんでるだけ」
 プリンの入ったグラスをテーブルに置きながら、藤堂は解説してみせる。
「まあ、河崎の場合、選んだら必ず結果を出さないでかってやつだから。その前にクリエイターを選んだところで既に決まったようなものでしょ?」
「はあ、なるほど」
 河崎の揺ぎ無い自信が、今までの成果となっているということだろう。

 


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