情報はもちろん直子の受け売りだが、世の中の情勢を見るのにたまにつけるテレビ番組の中で、民放にしては硬派な報道特集を佐々木は気に入っていた。
「彼女、岡田さんでしたっけ? 日曜の報道特集のキャスター?」
「佐々木さんの目にとまるとは、さすがマリオン。大学の後輩なんですよ。一年ほど前ニューヨークから戻ってきたんですが、猫好きで、浩輔ちゃんと猫談義始めたらとまらないんです。後で紹介しますよ」
いや、それには及ばないと、空のグラスを持って立った藤堂に、佐々木は言いそびれた。
「佐々木ちゃんてさ、あんなしっかり者の奥さんとかいいんじゃないかって思うよね、どっちかっていうと佐々木ちゃん、世話するよりされる方だし。佐々木ちゃんがご飯作ってたのは、佐々木ちゃんママと比べたら佐々木ちゃんの方が料理できるってだけだもんね」
いつの間にか佐々木の分もケーキの皿を持って戻ってきた直子が言った。
「何、言うてんの」
軽く笑い、佐々木は直子の持ってきてくれたケーキに取り掛かる。
「気さくな人みたいだよ、岡田マリオン」
「うまいね、これ。しっかりしたチーズケーキや」
「佐々木ちゃん、彼女のこと気に入ってたみたいだし、藤堂ちゃんに紹介してもらえば?」
「何でそんなこと言うん? そろそろ俺の面倒見るの、嫌になったとか? 春日さんに放り出されて、直ちゃんにまで見放されたら、俺、生きていかれへん」
「ナオ、本気で心配してんだよ?! 佐々木ちゃん、最近、何か元気ないし」
珍しく直子が真剣に口調を強めた。
「ゴメン、心配かけて。せぇけどここんとこ、仕事いっぱいいっぱいやし。片付いていくうちに元気になるて」
そこまで直子に心配かけていたことに、佐々木は自己嫌悪気味になった。
「うん………」
それでも直子はまだ納得いかないというような顔で、ケーキをつつく。
「にしてもキョウヤ、相変わらず能天気やな。新しい彼女?」
窓辺ではモデルらしい女の子とロックグループ『イリュミネ』のボーカリスト、キョウヤがさっきからいちゃいちゃしている。
「みたいだね。あ、良太ちゃんだ」
コートを手に入り口に現れたのは青山プロダクションの広瀬良太だった。
直子が手を振ると、良太が気づいてやってきた。
「お疲れ様です」
「良太ちゃん、ひとり? アスカさんや小笠原はぁ?」
のどかな口調で直子が聞いた。
「アスカさんは仕事の関係でパリだし、小笠原はスタジオなんだ」
そのうちポケットで携帯が鳴ったらしく、良太は壁際に移動した。
そういえば、良太はトモと親しいんやな。
二人はどんな関係なんだろうとか、トモがガキの頃から好きだった相手は良太ではないのかとか、またぞろ思考がそっちの方に傾きかけた佐々木は、今更なことを、と慌てて思考を追い払う。
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