恋ってウソだろ?!73

back  next  top  Novels


「くっそ! デタラメなこと書き立てやがって、あんな女とこれっぽっちも何の関係もない!」
 沢村は一升瓶から自分のグラスにカパカパ酒を注ぎ、一気に飲み干した。
「わかったから、お前、いくらなんでもそんな飲み方するのやめろ。明日、オフなのか?」
 見かねた良太が聞いた。
「明日は、チームの強制でトークショー……」
「…お前、わかってて、このザマか?! いい加減もうよせ」
 良太が一升瓶を取り上げると、沢村は大きく息を吐いた。
「にしても、デタラメ書かれたことなんか、よくあることじゃん。どうして今度ばっか、そんなに怒ってんだよ」
 神妙な顔つきで良太はたずねた。
「………良太に謝らなきゃならないことがある」
「……はあ? 何だよ……どこかで聞いたような台詞だ。俺にはお前に謝られるようなことは全く思い当たらないぞ」
「工藤のオヤジがお前と別れたら、俺はもうお前だけのために生きていくつもりだった」
 沢村はがばっと頭を下げる。
「すまん!」
「あのな、そんなこと考えてくれなくても俺は全然かまわないし、全く謝ってもらうようなことじゃないから!」
 良太は呆れて、声を張り上げた。
「好きな人ができた」
 ボソリと沢村は言った。
 誰にも、佐々木と出会ってから今まで誰にも話すことができなかった。
 だがもう佐々木のことを思うと、瞼の裏が熱くなってしまうくらい、きついのだ。
「え、何だ、やっぱりあの美人アナと……」
「あんな女じゃない! 違うんだ………」
 大きな男がうなだれて、しかも傲慢な男がこんな風に真剣に語るのを、良太は少し真面目な顔になって見つめた。
「それじゃ、その人にあの記事のことで誤解されたわけか?」
「誤解……してくれるくらいなら、まだいいかもな……」
 沢村は顔を上げた。
 いつもの端正でシャープな男前が、ひどく頼りない顔で良太を見た。
「十月の終わりだ……あの人に会って、自分でもマジかって疑ったんだが、ひと目惚れってやつ? それから何とかあの人と再会にこぎつけて、何度か会って………あの人も絶対、俺のこと好きだって、そう……思い上がってたのかもな………」
 沢村はじっと真剣な表情で聞いてくれる良太に、言葉を続けた。
「古谷さんに言われて、昼の番組に出させられただろ? あの人、それ見て俺が野球やってる沢村だってわかったらしくて、突然、終わりだって言われて……」
「え、お前、自分のことその人に話してなかったのか?」
「知らなかったんだよ、あの人、俺のことなんか。だから、俺は、それでいいと思ってた。野球選手の俺とかじゃなくて、素のままの俺を知ってほしいって……」
 沢村は自嘲気味に笑った。
「でも……野球やってるからって、そんな嫌わなくてもいいだろ。だったら、野球なんかやめるって言ったのに……」
 それを聞いた良太は優しく微笑んだ。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます