恋ってウソだろ?!72

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 シティホテルの一室では贅沢な空間を持て余している人間がひとり、酔えない酒を煽っていた。
 結構孤独には慣れているはずだった。
 高校を卒業と同時に居心地の悪い実家を出た。
 海外出張のために部屋が空いているから使っていいという先輩がいて、その部屋からグラウンドに通った。
 プロに入ってからは、移動することを考え、ずっとホテル暮らしを続けている。
 ホームゲームの時は、神戸にある亡くなった祖父の別荘を借りているが、拠点を東京に移したのは、自主トレで渡米した折、知り合ったウイルソンと会社をやることになってからだ。
 付き合った女は数知れず。
 それも大学までのことだ。
 大抵飽きてしまって、女が怒って終わり。
 プロになって言い寄ってきた女子アナとしばし付き合ってマスコミにも騒がれたが、付き合ったというより、持て余した夜に付き合わせただけだ。
 今ならわかる。
 かなりクールに生きてきたつもりだったが、それはおそらく人を愛したことがなかったからだ。
 ソファに寝転がって携帯を玩んでいた沢村は、躊躇いながら一番かけたい番号を選んだが、コールする前に指は別の番号を選ぶ。
「……よう」
 なかなか出なかったがしつこくコールすると、ようやく相手の声が聞こえた。
「どうしたんだ、沢村」
 既に時刻は夜十時を回っているが、良太はずっと編集作業で忙しいと言っていた気がする。
「忙しいのはわかってる。わかってるが、会いたい」
「お前、飲んでるな……」
「このままだと年明けても浮上できないかも知れない……」
 脅しのような台詞に、電話の向こうから相手の溜息が聞こえた。
「わかった。どこにいる?」
「俺の部屋……」
 三十分でドアがノックされた。
 ドアを開けると、バスローブ一枚の沢村を見てムッとした顔で良太がつかつか入ってきた。
「……良太、会いたかった……」
 思わず沢村は背後から良太を抱きしめる。
「おい、苦し…………離せってば! 酒臭さ………!」
 腕を緩めると、転がっているウイスキーの空瓶や半分以下になっている日本酒の一升瓶やチーズやハムなどの載った皿がテーブルに並んでいるのを見て良太は眉をひそめた。
「まさか、一人で今夜だけでこれ空けたわけじゃないだろうな?」
「いいからまあ、そこに座ってお前も飲め」
「言っただろ? 下柳チームで編集作業の途中で、また仕事にもどらなきゃならないんだ」
「いいから、飲め」
 沢村は伏せてあったグラスに日本酒をカパカパ注ぐ。
「あの美人女子アナの彼女はどうしたよ? まさかもう振られたってわけじゃないだろ?」
「お前まで、くだらねぇ冗談ぬかすな!」
 良太のちょっとした揶揄に沢村は大きな声をあげた。

 


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