「やだー、堺くん、ミニなんだ?」
「かっわいい! 堺くんにピッタシって感じ~」
先輩に借りたのだという勝浩の説明などなんのその、一人二年生の勝浩はゼミの女子学生の間ではマスコット扱いされていて、軽井沢の合宿所となっているホテルのログコテージに着く早々、先輩方はわいのわいのとかしましい。
東京とはうって変わって木々は鮮やかに色を変え、空は高く澄んでいる。
ホテルは実は教授の兄が経営しているため、学生にとってはありがたいかなりリーズナブルな費用でリッチな気分を満喫できる。
それぞれがホテルかホテルが持っているコテージに宿泊したのだが、勝浩の他にも一人暮らしで愛犬を二匹も引き連れてきている者もいて、参加したのは勝浩を除いて三、四年総勢十二名ほどだが、なかなか賑やかなものになった。
真面目な上物怖じしない意思の強さを持つ勝浩は、割りとおっとりした教授の海江田や先輩たちにも少々生意気に見られがちなところまでも気に入られていて、教授はもうすっかり勝浩が院生であるかのように扱っている。
ホテルの宴会場での宴会が終わると、ほろ酔い加減の勝浩はカラオケの誘いをパスしてコテージに戻ってきた。
「ただいま、ユウ」
やっと帰ってきたとばかりに出迎えるユウを撫でてやると、安心したのか、ユウは自分の居場所に戻ってうずくまる。
『動物愛護研究会』の活動も続けるつもりでいるので、いっそ武人の好意に甘えてミニを譲ってもらおうかなどと思いながら、風呂につかってベッドに腰を降ろした途端、携帯が鳴った。
「…あ、こんばんは……」
『発表、終わったのか?』
もしかしたらと思った相手、幸也の声に、未だにドキドキしてしまう。
無事終えて、あとはあちこちユウと歩いたりしてのんびり過ごしていると勝浩が言うと、
『軽井沢かあ、いいなー俺も一緒に行きたかったなっと』
「ゼミ合宿ですから一応」
勝浩はクスっと笑う。
『勝浩くんてば相変わらず真面目くんだからなー。な、な、今度、山中湖あたり行かないか? 都会の喧騒を離れて、一週間くらい、どうよ? 二人で。ああ、もちろんユウも一緒な』
二人で。
そんな言葉に勝浩の心臓はまたぞろ飛び跳ねる。
「いいですね。でも猫ちゃんたちどうすんです?」
極力声がうわずらないように、勝浩は聞き返す。
『やつらはタケにでも世話頼んでおくさ』
「またそんな~」
笑っている顔が電話越しに伝わってきそうだ。
『そういや、誰かに乗っけてもらったのか? ユウも一緒だし』
「あ、車、借りたんですよ、タケさんに」
一瞬間があった。
『タケに?』
「ええ、幸也さんにもらった車ばっか乗り回してるから、たまには動かしてやってくれって、ミニ貸してもらって」
『ああ、あの水色のやつね。俺に一言言ってくれればよかったのに。アウディでもポルシェでも喜んで貸したぜ』
「ポルシェなんて、俺には荷が勝ちすぎですよ。実は、ユウだけじゃなく、犬や猫運ぶのにそろそろ自分の車が欲しくて、中古かなんか探すつもりでいたら、タケさんが、ほとんど使わないから譲ってくれるって言うし………」
勝浩は文字通り遠慮してそう言った。
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