「……………………だめだ」
やっぱり…………あの人と俺じゃだめだったんだ。
うまくいくはずなんか、なかったんだ。
「ほんとに、バカだよな、俺」
ため息とともに自嘲しながら、勝浩は溢れ出る涙を拳で拭う。
所在無く動かした指は、見慣れた番号を押していた。
『よう! どうだ? 楽しんでるか?』
コール二回で、夜中というのにハイテンションな声が聞こえてくる。
「夜分にすみません、あの、車いつお返しにあがろうかと思って」
『ああ、いいよ、返さなくて』
「え、そういうわけには…」
『何、まだ迷ってるの? 勝っちゃんになら超お安くしとくよん。ある時払いでOK』
明るい武人は確かに頼りがいがあって安心できる存在だ。
「また、そんな」
『いや、ほんと。邪魔じゃなければ使ってれば? 気にしなくていいからさ。あの大家さんなら、必要な時にはタクシー代わりに使ってくださいとかってちょっとまるめこんで、駐車料ただにしてもらうとかさ』
調子のいいことを言ってカラカラと笑う武人に勝浩も苦笑せざるを得ない。
「わかりました、じゃあ、邪魔になったらまたお返しにあがりますね」
『おいおい、勝っちゃん~~。と、そだ、最近幸也のやつと会った?』
ドキッと勝浩の心臓が跳ね上がる。
「いえ………」
『そっか、だからだな~~、こないだ、あいつ妙に落ち込んでると思ったら、病気らしくて』
「……! 病気って、どうしたんです?! 幸也さん、まさか入院とか…」
思わず頭がパニクって、勝浩は声を上げる。
『病名はどうやら「勝っちゃん欠乏症」ってゆうらしい』
「……ば……バカみたいなこと言わないでください!」
からかわれたとわかって、からだの力が抜ける。
『ハハ……ワリィワリィ。でも、いやほんと、そんな感じ。しょーもねーやつだけどさ、見限らないでやってよ』
「見限るのはきっと幸也さんの方ですよ」
『え? なんだって?』
「いえ。飲みすぎ吸いすぎ要注意ですからね。じゃ、おやすみなさい」
何かまだ言いたそうな武人にきっぱり告げて、勝浩は携帯を切る。
武人相手になら、何も考えずにしゃべることができるのに。
「あ~あ……」
しばらくベッドに寝転がっていたがなかなか寝つけず、勝浩は冷蔵庫の缶ビールを一本取り出した。
カーテンの隙間から見える月を眺めながらビールを飲み終える頃には、ようやくうとうとと不安げな眠りが訪れた。
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