Tea Time21

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 奈央お手製の軽いイタリアンディナーに、特製のドルチェはパンナコッタ。
 明るい二人の美女を中心に大テーブルではおしゃべりに花が咲く。
 武人がうまくいけばと画策したはずの当の幸也と勝浩は、互いに意識しながらも電話で喧嘩して以来何日ぶりかで顔を合わせたのでどちらも言葉が出てこない。
 せっかくだからぜひピアノをと奈央にせがまれた裕子がリビングのスタンウェイでシューベルトのセレナーデを披露すると、「志央のピアノはものになる以前だし、ユキちゃんは問題外なんだけど、七ちゃんがすてきなの」と奈央に太鼓判を押された七海が照れながら「月の光」などドビュッシーを奏でた。
 裕子も「とってもすてき」とはしゃいでいる。
 そのあと、気を利かせた七海が、裕子の手土産のメロンを切ってみんなに振舞ったり、と一見和やか気に時が流れていく。
「タケちゃんはピアノ弾かないの?」
「俺のピアノはバイエルで終わりですよ」
 裕子に聞かれて武人は肩をすくめる。
「勝っちゃんもね~、ちっちゃい頃は一生懸命やってたんだけど、そのうちワンちゃんやネコちゃんの世話に夢中になってたから」
「裕子リンに教えてもらおうかな」
 武人が軽く訴える。
「いいわよ。勝っちゃんがお借りしてるミニのお礼ってことでいかが?」
「ちょ……、おかあさん」
 思わず二人の会話に割って入ろうとした勝浩だが、武人は「いいっすよ、じゃ契約成立ってことで」と勝手に話を進めてしまう。
 幸也と勝浩の仲をとりもとうと策を捻った武人であるが、よもやそのミニがきっかけで二人が言い争うことになったとは思いもよらない。
「そろそろ、帰るわ、俺」
 おもむろに立ち上がったのは幸也だった。
 途端、勝浩は、さっきから騒いでいた胸にズキ、と痛みを覚える。
 ついに一言も言葉を交わさなかった。
「え、おい、待てよ、まだこれからだろ」
「明日、早々に実験なんだよ」
 慌てて幸也に駆け寄った武人に、すげなく答えると、「じゃ、お先に失礼します。裕子先生、お会いできて楽しかったです」と幸也はリビングを出ようとした。
「小母様、たまには祖父のところにも遊びにいってやってくださいね。お邪魔しました」
 リビングを出る前に奈央を振り返ってそう言うと、幸也は志央や七海はもとより勝浩と目も合わせようともせず、たったか玄関ドアを開けた。
「ちょっと待てって、幸也!」
 裏の駐車場まで追いかけてきた武人は、幸也の肩を掴む。
「いったいどうしたんだよ、勝っちゃん、ほっといて帰る気かよ」
「裕子リンがいるだろ」
「違うだろ! 勝っちゃんと喧嘩でもしたのかよ」
 しばしの沈黙のあと「多分、俺じゃだめなんだよ」と幸也は車のロックを外し、ドアを開けた。
「何だよ、それ、お前……んなこと聞いたら、泣くぞ、勝っちゃん」
「そんなに心配なら、お前が慰めてやればいいだろ」
「はあ? おい、幸也……」
 聞く耳をもたないといった感じで、幸也はハンドルを切ると、通りに出たアウディはあっという間に見えなくなった。

 


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