Tea Time27

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 ショックではあったけれど、あの頃は半分諦めていたことだからと自分を無理に納得させた。
 自分の思いを心の奥に追いやることができたから。
 けれど、幸也に再会できたことだけでも嬉しかったのに、予期せぬ幸せを味わったかと思ったら、まるでジェットコースターのように今度は地の底に落ちていく。
 なまじっか、ほんの少しでも心が通じたと思ったばかりに、落ちたら得たいの知れない暗い深い闇の底で、もう這い上がれそうにない。
 足がガクガクと震える。
「勝浩!」
 七海が勝浩の腕を掴む。
「でも……それが幸也さんが決めたことなら……」
 勝浩は首を横に振る。
「俺には何も……」
「ばかやろう!」
 普段温厚を絵に描いたような七海にいきなり頭の上から怒鳴られて、勝浩は思わず首を竦める。
「幸也さんがじゃねんだよ! お前がどうしたいかだろ?! いいか、生きてりゃ、でっかい壁に跳ね返されることなんかいくらもあるし、怖がってたら、前に進めねんだよ」
 七海の青い瞳を見つめたまま勝浩は動けない。
「幸也さんはそれでも行っちまうかもしんないさ、けど、お前、いっぺんくらい、自分の思いちゃんとぶつけてみろよ」
 わざわざ朝早くからお節介をやくためにはるばる駆けつけるなんて、この上もなくお人よしで心根の一途な友人のことを、勝浩はひどく誇りに思えた。
「わかったか?」
 勝浩は唇を噛んでこっくりとうなずいた。
「学生証、持ったか?」
 七海にせきたてられて部屋をあとにすると、差し出されたヘルメットを被り、勝浩は七海の愛車の後ろに跨った。
「極力安全運転だが、極力速く行くからしっかり掴まってろよ」
「うん、わかった」
 いずれにせよ首都高はどこも渋滞している。
 二輪の二人乗り禁止区間があるため、中環経由で東関道へ向かうルートをとる。
 車の間を縫うようにして七海はZRX1200Rを走らせた。
 必死で七海にしがみついていた勝浩は、バイクが新空港自動車道から新空港I.C.を降りて第一ゲートを通過した頃、ようやく我に返ったように眼前の事実を思い知る。
「ANA、南ウイング四階、ビジネスだから、Cゾーン。チェックイン間に合うかどうかってとこだ!」
 七海の声を背に、勝浩は第一ターミナルの駐車場から南ウイングへと走り出した。
 海外への渡航者、それを見送る人々で賑わうロビーに足を踏み入れた勝浩は、あたりを見回して一瞬、呆然と立ち尽くす。それから自分を落ち着かせて七海の言葉を思い出してゆっくり口にする。
「えと…ビジネス、Cゾーン……」
 幸也と同じくらい背の高い男はあちこちにいた。
 だが幸也ではない。
「幸也さん……」
 セキュリティチェックを通過していたらもう遅い。
「幸也さん…!」
 もう一度知らず知らずに声に出したとき、ふっと目を上げたそこに振り返った顔。


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