アラサーとか、とても人に言えたものではない。
秋山は二人を見ながら心の中で呟くと紅茶を飲み干した。
まあ、この二人は何だかだ言ってお互い気心が知れているわけで、アスカにとっては大事な友人に違いない。
なかなか信頼できる友人などできないアスカだが、青山プロに移籍したことは彼女にとっていいチョイスだったわけだ。
いや、青山プロの大概の社員にとっても同じようなことが言えるのかもしれない。
自分はもとより、何かしら問題を抱えていた人たちにとっては、特に。
ああでも、やはり良太の存在は大きいのだろう。
良太が、頑なな工藤を変えてきたことは確かだ。
無論、工藤にとって良太は何を置いても大切な存在なのだ。
工藤が巻き込まれた冤罪事件にせよ、やはり良太が中心にいてこそ解決したのだから。
本谷にはそこまで知る必要はないが、工藤にはこれ以上拘わらない方がいい。
秋山はケーキを食べ終わってもまだこそこそと言い合いをしている良太とアスカを見ながら、そんなことを思っていた。
「アスカさん、これから移動でしたっけ」
紅茶を飲んでようやく落ち着くと、良太が尋ねた。
「そうよ、長野ロケ」
今撮影中のコメディドラマにヒロインとしてアスカは出演しているのだが、来年夏の放映予定で主演の岡村浩紀のスケジュールに合わせているので、割と長いスパンで撮影をしている。
長野の農家の息子が東京の美人OLに一目ぼれして猛アタックし、OLの方は付き合っていた男が出世のために社長の娘であるOLを利用しようとしていたことがわかり、男を振って会社も辞め、ヤケクソで長野に移住するという内容である。
「面白そうですよね、そのドラマ」
「まあ、そうね。割と面白いかも」
「相手役の岡村さんとは、どんな感じです?」
実は最近岡村とのツーショットを写真誌に載せられたりと、アスカにしては珍しくイロコイ沙汰で少し騒がれた。
「ああ、それこそ、あれよ。岡村の事務所の策略で、宣伝のためにあたしを利用したのよ。ムカつく!」
「やっぱり」
良太もそれを聞いてがっくりと項垂れた。
「ちょっと、やっぱりって何よ、やっぱりって」
「いやまあ、岡村浩紀って割と遊び人って話だし、ってことですよ」
岡村は中堅の人気俳優で、演技は確かだが、以前から女癖の悪さを指摘されていた。
「あたしだって、そのうち、立派なスクープ記事になるから、見てなさい」
「それって、どうゆう風に取ったらいいんですか」
「くだらないことばかり言ってないで、そろそろ行きますよ」
秋山はいい加減二人に呆れて立ち上がった。
駐車場で良太は二人と別れると、少し早いが檜山邸があるK市に向けて車を走らせた。
首都高に入って約四十分ほどで檜山邸に着く予定だ。
しかし資産家とか由緒ある家とか、相続争いなんてほんとに起こるもんなんだ。
良太は運転しながらそんなことを思う。
沢村なんかも父親のことを毛嫌いしているし、檜山匠に至っては、高校の時に祖父の養子に入るとか、行動力の人だよな。
要は家を捨てたってことだよな。
とっとと留学しちゃってるし。
いやあ、跡目争いっていえば、工藤の祖母だか伯父だかの組が面倒なことになってるんだっけ。
とっとと決めてくれれば工藤にトバッチリが来ることもないだろうに。
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