残月64

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 気合を入れて向かった良太がオフィスに戻ってきたのは、とっくに鈴木さんも帰ってしまった夜の八時だった。
 打ち合わせといってもは方向性を決めるための軽いジャブ的なものだ、と工藤からは聞かされていたが、部長の乾、担当の佐原と幸田、それと良太の四人で、午後二時から延々七時半まで、ああでもないこうでもないと意見が交わされた。
 最初は気を張っていた良太も、二時間も過ぎた頃から、実際の撮影状況や今回のゲスト檜山匠についての考察を踏まえ、復習して頭に入れてきたこれまでのプロジェクトからあれこれと引っ張り出しながら自分の考えを率直に口にしていった。
 中にはド素人的な見方もあったものの、案外それに対してバカにするようなこともなく丁寧に説明してくれたのが乾だった。
 ともあれ、会社に辿り着いた時は、「疲れた~」とつい口にするくらいで、身体を動かす方がまだマシと思われた。
「工藤、いつ帰ってくるんだろ」
 しばらく自分のデスクでパソコンを前に良太はぼんやりと座っていた。
 やることはあるのだが、切羽詰まったものはないし、明日にしようと思う。
 窓の外を見ると、葉を落とした街路樹は寒々し気に立ち並び、時折、残っていた葉が風にもぎ取られていく。
 いつからか通りのショーウインドウにはオレンジ色のかぼちゃがニタッと笑ってこちらを見ている。
 人通りが多い昼間はユーモラスにも見えるが、日が落ちてライトに浮かんでいるさまは物寂しくもあった。
 秋が深まるこんな時、誰もいないオフィスに一人でいると、たまに逢いたいと思ってしまう。
 心の寂しさは不意に身体の奥からも工藤を恋しがっていることをわざわざ教えてくれる。
 どれだけかぼうっとしていた良太は、携帯のラインの着信音にハッと我に返った。
『まだ、撮影のスケジュール決まらないの?』
 アスカからである。
 もう少しかかると返信した良太は、パソコンの電源を落とし、オフィスを閉め、自分の部屋に向かった。
 いつものように猫たちにご飯をやり、トイレを掃除し、コンビニで買ってきた弁当を食べ、風呂に湯を張って身体を沈める。
 疲れているのはわかっていたが、いつの間にか眠ってしまい、湯に顔をつけたところで、うわっと目を覚ました良太は、風呂から上がるとベッドにゴロンと横になり、録画していたドラマをチェックするのを思い出して再生ボタンをおした。
 ところまでは覚えているが、うつらうつらしてそのまま眠ってしまった。
「良太」
 聞いたことのある声が耳元で名前を呼んでいる。
「ったくしょうがないな」
 声の主は良太の握っていたリモコンを取り上げ、テレビを消した。
 しばらくすると、何かが胸の突起のあたりを這いまわっている。
 唇がふさがれ、次第にいやらしさを増していくにつれ、息が苦しくなった良太はようやく目を開けた。
「え……工藤……」
 言葉を発する前にまたキスが襲う。
「……ん……あっ……!」
 帰ってきてたんだとか、撮影はどうだったんだとか、そんなこともどこかへ吹き飛んで、工藤のエロい手管に翻弄されているうちに、いつの間にか工藤の手に握られた良太はあっけなくはじけた。
 心も身体も工藤をひどく欲しがっていて、後ろにごつい指が届いてぬるりとした冷たさを感じたものの、良太は頭の先からつま先までやけにエロくて蕩けそうな状態で、自分でコントロールもできない。
 膝を折られ、工藤が押し入ってきても、動くたびに甘い刺激が脳髄まで駆け上がる。
 モノも言わず、いつになく荒ぶって突き上げる工藤に、良太は言葉にならない喘ぎ声を上げ続けた。
 過ぎた快感が幾度も良太を襲い、やがて意識が飛んだ。
 明け方、何となく目が覚めた良太は、工藤の胸に思い切りしがみついている状況に気づいた。
 もうちょっと、このままでいたいな。
 少し顔を上向けたものの、慣れ切った工藤の匂いに包まれていたい、と良太はまた目を閉じた。

 


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