ホールを一回りして空のグラスとともにカウンターに戻ったデレクは改めてホール内を見回した。
カウンター内で洗浄されたグラスにひたすらシャンパンやらワインやらを注いでトレーに乗せてデレクに渡すのに専念しているのはやはりスタッフになり切ったギィだ。
「あなた、アメリカ人でしょ」
再び、ホールに出向こうとしたデレクに、隣に立った女性スタッフが話しかけてきた。
「え、ああ」
表情は変えず、デレクは素早く女の頭から足元までをチェックした。
「やっぱり! あたし、ニューヨークからこっちの大学に留学してるの。今月ちょっと遊びすぎちゃって、ちょうどいいバイトだと思ってこの屋敷に来たらさ、あの、玄関ですかしてるフランス語しか話さないオッサンがどこに住んでるから始まって家族が何してるかまで聞いてきてさ、もうやめちゃおうかとも思ったけど、バイト代いいじゃない? だから我慢して覚えたてのフランス語で、単語、並べ立てて、やっとOK。ほんともうフランス人てお高くてめんどくさくてやんなっちゃう」
ニューヨーク訛りで一気にまくし立ててから、にっこり笑った。
「あ、あたし、メリッサ。あなたは?」
カールしたブルネットのポニーテール、ピンクのリボン。印象的な黒い瞳、笑顔が可愛い美女である。
制服の上からも長い脚といい、抜群のプロポーションだ。
「デイブだ。俺もニューヨーク」
デレクは再び会場内を見回しながら言った。
「ほんと? あたし、ブルックリン。あなたロングアイランドでしょ? あたり?」
「いいせん」
デレクは言い置いてホール内に出て行った。
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