Born to be my baby-デレクとルカ29

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 ホールにはさまざまな国の人間たちがいた。
 ルカはあまり顔を動かさず、視線だけで周囲をチェックした。
 ルカとケインのボタンにも当然カメラが仕掛けられている。
 アメリカ人らしき夫婦、フランス人のカップルだろうか、それからロシア語も聞こえる。
 あれがド・コリニー伯爵だろう。
 夫人は別の客と歓談している。
 ルカはいつもより過敏に見てとった。
 彼らより早くホールに入って、グラスを客人たちに渡しているデレクをルカはすぐに見つけた。
 デレクの方も目だけでルカを認め、カウンターの中に戻っていった。
 するとデレクを待っていたかのように、先ほどのメリッサという女がまた話しかけた。
 遠目にもチャーミングな女だ。
 ルカはそれを確かめてまた苛ついた。
 そう言えば、逃亡したマルガレーテ・ルンゲという女が何処かにきっと潜んでいるはずだ。
 笑って人を殺すような冷酷極まりない女だという。
 どうしたらそんなふうに冷酷になれるのだろう。 
 今度の任務はひどく気が重かった。
 向こうはどう接触してくるつもりだろう。
 二人はそばを通ったスタッフに渡されたグラスを持ったまま、大勢の招待客の中で立ち尽くしていた。
「全く、急に来て、部屋を取れなんて言うんだから」
「だからさ、お前んちの名前なら、きっと部屋取れると思ったんだ」
 さっきのフランス人の若いカップルがすぐそばにきて話している。
 えらく若そうだけど、まさかティーンエージャー? じゃないよな、グラス持ってるし。
 女はブルネットを品よくまとめ、上品な明るいブルーのドレスを着ていた。

 


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