「ああ。プログラムαについて厄介なことがわかった。開く時には音声に反応するらしい。即ちDr.Cのだ」
ルカは一瞬固まった。
もともと自分では開けないことはわかっていたが、キーボードを叩く以前の問題だ。
「だが、あちらさんも少しは助力をくれるつもりのようだ。ルカに接触したいと言ってきた」
「この状況でですか?」
「そうだ」
ルカはあたりを見回した。
「とにかく注意を怠るな」
「はい」
ラコストの声が切れた後、ルカの脳裏を何となく嫌な予感がよぎった。
「ラコストは何を血迷って、こんなとこまで老体を引きずってきたんだ。情報なら誰か捜査員をよこせばいいだろう」
ケインはほとんど怒っているように言った。
「さあ、いろんなプレッシャーで、ただ本部で待っている気になれなかったんだろう。この計画が失敗して、一般市民に犠牲者でも出たりしちゃ、首がいくつあっても足りない」
そう言ったルカも、もし失敗したらと考えてぞっとした。
それはつまり自分はこの世にいないということだ。
下手すると、今度こそ家族にも会えないってわけか。
「それにしてもとっくに八時を過ぎている。敵さんはいったいいつ接触してくるつもりだ」
ケインが少しイラついた声で言った。
「こちらの動きをみているのだろう」
この人垣の中だ、容易に動きが取れないのは向こうも同じだ。
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