対策本部に戻ったデレクを待っていたのは、長いブロンド、長身、パンツスーツに身を包んだ美女だった。
一瞬、誰だ? と眉をひそめたデレクに、きりりとした声で美女が言った。
「ドランです。ラコストに代わって今後私が指揮を執ります」
ようやくデレクは思い当たった。
CIRUのロシア支局にいるといわれた凄腕の捜査官だ。
クアンティコでも彼女のことは評判だった。
「宇宙局員のアラン・ジオノは潜入捜査官で、ぎりぎりのところでCIRUの関係者に『カフカ』のスパイがいることをつきとめ、危険を察知して直接ラコストに伝えようとしたらしい」
ドランは淡々と言った。
「それに気づかれて向こうが先手を打ったわけか」
デレクは言った。
「感傷に浸る時間はない。行くよ」
ドランに促され、ミュージシャンという設定で彼らを追うことになっているデレクは、マグナム銃とマシンガンの入ったギターケースを抱えた。
「くれぐれも気を付けてください」
少し涙目のエミリーの言葉に送られて、デレクとドランはすぐに本部屋上からヘリコプターに乗り込むと、パリ空軍基地へと向かった。
チャーター機でリヨンに向かう手はずになっており、リヨンのCIRU捜査官数名が現地警察とともに既に空港へ向かっていた。
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